尖閣周辺に中国の軍艦が侵入したというニュースに緊張したが、ことの内容は第三次世界大戦を起こしかねないことだった。
いつもながら沖縄のメディアはスルーするどころか、「中国の脅威を煽るな」などと大きな見出しをつけている。そして地元石垣市民の声が聞こえない不思議さ。その心境は計り知れないが、無力な一般市民とはいえ「望み」や「希望」はあるはず。この期においても抗議の声すら出ないのか。
辺野古や普天間では連日のように基地反対のヒステリックな抗議活動が繰り返されている。八重山諸島の住民は中国に何も言わない。
鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 第239号(6月13日)を転載

中国、危険水域に!

中国海軍のフリゲート艦525が尖閣諸島周辺の日本の接続水域に侵入した。日本政府は9日未明、中国の駐日大使を呼び厳重に抗議した。日本のマスコミの多くは、この事態を軽視しているが、実は中国海軍のこの行動は第3次世界大戦を引き起こしかねない危険なものである。

そもそも、米国は「尖閣諸島は日米安保の発動対象だ」と明言している。つまり尖閣に、中国軍が侵入した場合、米軍は中国軍を攻撃すると宣言しているのである。従って中国は今迄、尖閣周辺に中国軍を侵入させるのを控え、軍隊ではない海上警察を侵入させてきたのである。

だから今回、もし中国の軍艦525があのまま尖閣に接近し続けたら、米軍は攻撃態勢を取ったであろう。その場合、単に接近して来る軍艦だけを攻撃対象にするのではない。後方に控える中国軍が525艦を援護する可能性がある以上、これらの後方部隊も殲滅しなければ米軍もまた反撃の危険にさらされるのである。

米中戦争の危機だったことは、これでお分かり頂けただろうが、もっと厄介だったのは、ロシア艦隊が直前に接続水域を無害航行しており、中国のフリゲート艦525は、これに追随する形で侵入した点だ。

ロシアは尖閣の日本領有を認めており、尖閣周辺を軍艦が通行しても国際法上問題はないが、あたかも中国がロシアと連携しているかの様に装って、中国が中露と日米の対立の構図を演出しようとしたことは明らかだ。

地中海では中国海軍は既にロシア海軍と共同演習をして、米欧海軍との対立を煽っているから、中国海軍の今回の行動は、東西対立の激化を狙ったものと言える。早い話がロシアを巻き込んで第3次世界大戦を引き起こそうとしたのである

安倍政権の米欧露との緊密な連携に立った現実的な安保政策が今回、中国の野望を挫いたのである。

相変わらず中国の御機嫌取りに終始している日本のマスコミの多くが、この件をあまり報道したがらないのは蓋(けだ)し当然であろう。

 


軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)

鍛冶俊樹(かじとしき)

1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
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