支那による尖閣の領海侵犯・衝突事件、北朝鮮による拉致事件、韓国による竹島問題など、日本はテロに対して極めて脆弱なのは既知の通りだ。「日本が決して軍隊を派遣して報復しない」と知っているのは何もテロリストだけではなく、支那や朝鮮半島も同様だ。
私たちは「集団的自衛権の行使容認」程度で賛否が飛び交うような平和ボケから一日も早く目を覚ますべきだ。

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル【1月8日号】 を転載

テロと移民

パリでイスラム系テロリストによるマスコミ襲撃事件が発生した。「12人が殺害され、犯人は現場から逃走した」という事態に世界は震撼している。2001年9月11日の米国同時多発テロ以来、欧米はイスラム過激派によるテロに悩まされてきた。

日本は幸いなことに国内においてイスラム系テロに見舞われたことはないが、1970年代には左翼過激派によるテロが世界を席巻し日本も欧米と軌を同じくして苦しめられていた。

1977年9月28日、パリ発東京行き日航472便は乗客・乗員156人もろともに日本赤軍に乗っ取られバングラデシュのダッカに強制着陸させられ、人質解放の条件として身代金600万ドル、当時刑務所に収監されていた左翼テロリスト受刑者6人の解放を日本政府は呑んだ。
人質が解放された9日後の10月13日、ドイツのルフトハンザ機がドイツ赤軍に乗っ取られソマリアのモガディシオに強制着陸させられたが、ドイツ政府は犯人の要求を拒否し、特殊部隊を突入させ、犯人を射殺し人質を解放した。

この事例から明らかなように日本はテロに対して極めて脆弱である。事件が起きない幸運に頼っているだけで、ひとたび起きてしまえば何らの対策もないというのが実状なのである。

孫子の兵法に曰く「ゆえに用兵の法は、その来らざるを頼む事なく、我のもって待つあることを頼むなり」(敵のやって来ないことを頼りとするのではなく、いつやって来てもよいような備えがこちらにあることを頼みとせよ

日本国内でイスラム系過激派によるテロが起きていない最大の要因は、日本が移民を受け入れていないことによる。イスラム系の移民が増大すれば、そこにイスラム系のテロリストが忍び込む確率も増大する。欧米は無制限に移民を受け入れたが故に、テロの増大に悩まされている訳だが、これは単なる確率の問題である。日本はその確率が低いだけであって、起きる可能性はやはりある。

国内ではイスラム系のテロは今の所起きていないが、海外では日本人は既にテロに見舞われている。2013年1月にアルジェリアの天然ガス精製施設がイスラム過激派に急襲され、日本人10人を含む8か国37人が殺害された。
殺害された外国人の人数が、日本がフィリピンや英米を抜いて最多であったのは「日本が決して軍隊を派遣して報復しない」とテロリスト達が知っていたので、まず日本人から処刑した為である。「集団的自衛権の行使を容認すれば日本もテロの被害に遭う」というような言説が如何に的外れであるかは、これで明らかだろう。

日本は集団的自衛権の行使容認以前からテロの被害にあっており、集団的自衛権の行使容認はこうしたテロを取り締まろうという国際社会に協力する為なのである。

 


軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)

鍛冶俊樹

1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、論文「日本の安全保障の現在と未来」が第1回読売論壇新人賞佳作入選。現在、日経ビジネス・オンライン、日本文化チャンネル桜等、幅広く活動。

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