大きく躍進している安部外交だが、それを維持し、強固に支えるには、「武器輸出三原則」の見直しが必要だ。パワーバランスなくして対等な外交は構築できない。歴史が示すところだ。
軍事ジャーナル【3月14日号】 を転載
武器輸出と防衛産業
一昨日、安倍政権が従来の武器輸出3原則に代わる「防衛装備移転3原則(案)」を提示した。「武器輸出3原則」などといえば、原則に従えば武器輸出が出来るように思われようが、1960年代に佐藤内閣で制定された武器輸出3原則は70年代、三木内閣で変更され現実には武器輸出完全禁止となっている。
小生はかねてから武器輸出3原則の見直しを主張してきたから、今回の動きは歓迎するところである。そもそも「武器輸出が戦争を引き起こすから反対」という左翼の批判は受け入れがたい。
彼らは、今まで全く武器輸出をしてこなかった日本の防衛産業を批判こそすれ、決して評価しない。一方、現に武器輸出をしている中国やロシアや北朝鮮などを決して批判しないのだ。
ロシア(ソ連)のカラシニコフ銃が世界中のテロリストにどれだけ愛用されてきたか。中国や北朝鮮の武器がアフリカや中東でどれだけの虐殺に寄与したかを知っていながら、決して批判しようとはしない。
つまり左翼にとっては旧共産主義陣営の勢力拡大は望ましいが故に批判せず、旧資本主義陣営の勢力拡大は望ましくないが故に批判している訳である。ためにする批判としか言いようがない。
武器は侵略にも使えれば防衛にも使える。1979年、中国軍がベトナムに侵攻したとき、ベトナムはロシア(ソ連)製の武器でこれを撃退した。同年、ソ連軍がアフガニスタンに侵攻したとき、米国は当初不介入の姿勢を取ったが、レーガン政権に代わって密かに武器を供与した。その武器でイスラム戦士たちはソ連軍を撃退したのである。
もとより新3原則では紛争当事国には武器輸出しないとなっているから、今現在、大国の蹂躙に苦しむ小国の民衆に武器を供与することはできない。しかし侵略の脅威に怯える国々に日本の優秀な兵器が供与されれば、侵略を未然に抑止することができる。
武器が転売される可能性も指摘されるが、日本のハイテク兵器は常時メンテナンス・サービスを必要とする。メンテナンスを断てば直ちに使用不能となるから、その懸念はない。もし心配ならブラックボックスを組み込んでおけばいいのである。
昨日、防衛産業最大手の三菱重工は機構改革を発表した。従来の8事業本部制を改め4ドメイン制にする。その一つは「防衛・宇宙ドメイン」といい、従来にはなかった「防衛」の語が冠せられている。3原則見直しは安倍政権下で着々と進んできたから、やはりその動きに呼応したものと見ていいであろう。
今回の3原則見直しは、安倍政権の掲げる積極的平和貢献の有効な一打になると言っても過言ではあるまい。
軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、論文「日本の安全保障の現在と未来」が第1回読売論壇新人賞佳作入選。現在、日経ビジネス・オンライン、日本文化チャンネル桜等、幅広く活動。
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