過去の歴史を鑑みて、なかなか面白いコラムです。

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 第145号 を転載

1989.6.4 天安門

今年は天安門事件25周年に当たり東京でも集会が開かれる。筆者も賛同しているから、下記参照の上、参加を検討されたい。
「天安門事件二十五周年 東京集会」

さて1989年は世界史的に見て激動の一年だった。フランス革命200年、大日本帝国憲法発布100年、に当たるこの年は昭和64年として明け、1月7日、天皇崩御、平成に改元して平成元年となったが、同時に日本は経済的繁栄の頂点にあり、平均株価は年末に史上最高値3万8000円台を付けた年でもある。現在日本の平均株価は1万4000円台であるから、その2.5倍以上であり、バブルと呼ばれた繁栄の凄さが偲ばれよう。

そして、中国における天安門事件は丁度この年の中間の6月4日に勃発している。そこで事件前後の国際情勢を調べて見ると、現在との類似性に驚かされる。というのも、今月20日にロシアのプーチン大統領が中国上海を訪れ、習近平主席と会談、そしてロシアと中国の海軍は東シナ海で過去最大規模となる合同軍事演習を挙行する予定だ。

ところが25年前の5月15日、ソ連のゴルバチョフ書記長は北京を訪れ中国の最高実力者・?小平と会談し、中ソは30年ぶりの歴史的和解にこぎ着けた。当時のソ連は国内の民族運動や周辺国の反発、そしてアフガニスタン侵攻の行き詰まりに苦しんでいたし、中国は国内の民主化要求への対処に苦慮していた。

つまり行き詰った二つの独裁国家が救いを求めて急接近を図った訳だが、現在では中国がかつてのソ連同様に国内の民族運動や周辺国の反発、尖閣侵攻の行き詰まりに苦しみ、ウクライナの民主化要求への対処に苦慮するロシアに接近を図っている。

ならば、かつてのソ連の立場に現在の中国は類似し、今の東アジアの状況がかつての東欧や中央アジアの状況に近似していることになる。そこでかつてのソ連を現在の中国に、かつての中国を現在のロシアに、そしてかつての東欧や中央アジアを現在の東アジアに置き換えてみると、どうなるか?

1989年6月4日:中国、天安門広場の学生たちを虐殺して、民主化運動を弾圧。
2014/6/4:ロシア、ウクライナの民主勢力を弾圧。

1989年7月15日:ソ連領アブハジア自治共和国で民族対立、激化
2014/7/15:中国、新疆ウィグル自治区で民族対立、激化

1989年8月23日:バルト3国で反ソ独立運動、表面化
2014/8/23:東南アジア諸国で反中運動、激化

1989年9月12日:ポーランドで反ソ政権、誕生
2014/9/12:東南アジアで反中政権、誕生

1989年10月18日:東ドイツのホーネッカー書記長、退陣
2014/10/18:北朝鮮の金正恩第1書記、退陣

1989年11月9日:東ドイツ、国境を開放、ベルリンの壁崩壊
2014/11/9:北朝鮮、国境を開放、38度線消滅

1989年12月3日:マルタ島で米ソ首脳会談、冷戦終結を宣言
2014/12/3:海南島で米中首脳会談、中国、北朝鮮権益を放棄

1990年3月8日:東ドイツで自由選挙、実施
2015/3/8:北朝鮮で自由選挙、実施

1990年7月1日:東ドイツ、西ドイツ・マルクを導入
2015/7/1:北朝鮮、韓国通貨ウォンを導入

1990年8月31日:ドイツ再統一条約、調印
2015/8/31:韓国朝鮮再統一条約、調印

1990年10月3日:東西両ドイツ統一
2015/10/5:韓国朝鮮統一

1991年9月6日、エストニア、ラトビア、リトアニア、ソ連を離脱
2016/9/6:内モンゴル、ウィグル、チベット、中国を離脱

1991年12月31日:ソ連、消滅
2016/12/31:中華人民共和国、消滅

勿論これは予言ではない。一つのシミュレーションとして考えて貰えば、現在の国際情勢の分析の一助となるであろう。

 


軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)

鍛冶俊樹

1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、論文「日本の安全保障の現在と未来」が第1回読売論壇新人賞佳作入選。現在、日経ビジネス・オンライン、日本文化チャンネル桜等、幅広く活動。

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