選挙戦に入り、各政党では経済やエネルギー政策を前面にした論調が目立つが、それらは国があればの話だ。もちろんそれを前提にしているのだが、国防を前面に出しているのが自民党の安倍晋三だ。
法と軍の整備。国防がもたらす経済効果と外交力。
願ったり叶ったりだ。
JB PRESS【日本再生】【国防】桜林美佐 2012.11.29 から一部転載
世界が欲しがる
「万物に神宿る」国の防衛装備品
防衛装備品の輸出を真剣に検討する時が来ている
とにかく、この日本の製造業が今、厳しい逆風下に置かれている。その原因は為替や原材料費の高騰など様々にあるが、根本は私たち日本人がいつの間にか「物作り」の尊さを忘れ、安い物を「買ってくる」方がお得だと考えるようになったことが大きいように思う。
このことは、物作りの国ニッポンというアイデンティティーを失うばかりでなく、景気をますます萎縮させるだろう。日本はもっと製造業を活性化させ、世界に出ていくべきなのではないだろうか。
まず不可欠なのは、国としての強力な後押しだ。
何でも競争入札制度にしたり、メーカーが他メーカーや国と情報交換しながらより良いものを作ろうとすれば「談合」だと叩いたりするような行為は、救世主たる彼らの足を引っ張るばかりで、何一つ利がないことに国民も早く気付く必要がある。
東南アジアからの引き合いが多い日本の防衛装備品
ニーズのある各種部品や、輸送機などの汎用性の高いものから始めるのだ。スペックの変更や保全の問題で壁は高いが、将来的には艦艇や潜水艦といった装備品についても検討の余地があった方がいい。
これらの装備については東南アジア諸国からの引き合いが多いと聞く。インドネシアやタイ、ベトナムなどといった中国の海洋進出に備える必要に迫られている国々にとって、日本の高性能な装備品のニーズは高いのだ。
こうした国々に対し、何らかの形で日本の防衛装備品技術が整備等も含め生かされるようになれば、アジア地域の平和貢献策となるだろう。企業から国が買い取りODAとして供与すれば、外交力の一翼となる。
すでに海上保安庁はマラッカ海域でのキャパシティビルディングを行っており、また現在、新明和工業が海上自衛隊で使っている救難飛行艇「US-2」の民間転用・輸出に向け諸手続きを進めているが、個別の努力に任せるのではなく、国のプロジェクトとして取り組むべきだ。
(リンク:【桜林美佐】 世界が欲しがる救難飛行艇「US-2」 )
日本製品は高品質かつ「誠意」が込められている
すでに中国や韓国も国の投資によって相当な技術力をつけてきている。しかし、それでもまだ「日本のものが欲しい」という声は多いという。
その理由は、アフターケアがしっかりしていて長持ちするという日本ならではの質の良さ、そして物に込められた「誠意」ではないかと、アジア事情に詳しい人から聞いたことがある。まさにマニュアルにも仕様書にも記せない、「万物に神宿る」国ならではの特徴ではないだろうか。
日本人は自覚していないかもしれないが、この国のソフトパワーは世界に誇れるものなのだ。現時点では自衛隊向けのため制約も多いことから抑制している国産能力を、特定分野については輸出に向けていくべきだろう。
ただ、忘れてはならないのは、アジア各国のニーズは「今」であるということだ。何年も待ってくれる話ではない。
GDPがマイナス成長だったという記事を肩を落として読んでいる場合ではない。防衛産業という切り札はある。虎の子の潜在能力を生かして元気を取り戻すのか、それともこのまま坂を転げ落ちるのか、決めるのは「今」しかない。
桜林 美佐 Misa Sakurabayashi
1970年生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作した後、ジャーナリストに。
国防問題などを中心に取材・執筆。
<主な著書>
『奇跡の船「宗谷」-昭和を走り続けた海の守り神』
『海をひらく- 知られざる掃海部隊』』
『誰も語らなかった防衛産業』
『日本に自衛隊がいてよかった 自衛隊の東日本大震災』
オフィシャルサイト: 桜林美佐
ブログ: 桜林美佐の新・国防日記