「中国包囲網」という言葉が独り歩きをしている感があるが、中国は世界の中の一国に過ぎず、その体制は常に崩壊の危機に瀕している。日中関係において日本が利することはなく、やがて「包囲する」などという言葉さえ忘れ去られるだろう。首相や政府要人が中韓以外の国々を訪問するたびそれぞれの外交目的や意味が語られるが、大局的にみると中韓以外の国々との関係促進は、概ね日本の国益に帰するということだ。

ZAKZAK 2013.03.16 を転載

安倍首相、モンゴル訪問のウラ
中国牽制&鉱物資源開発での協力

安倍晋三首相が今月末、モンゴルを訪問する。エルベグドルジ大統領と会談し、レアメタルなどの鉱物資源開発で協力を確認する考え。モンゴルは中国の隣国のため、沖縄県・尖閣諸島をめぐって対立する中国を牽制する狙いもあるが、実は、同国は北朝鮮とも深い関係を築いている。

「今月初旬、安倍首相に近い自民党の塩崎恭久政調会長代理がモンゴル訪問から帰国して、わずか数日で『首相訪問』は内定した」

官邸周辺はこう語る。

安倍首相は今月30、31両日にモンゴルの首都ウランバートルを訪問する。エルベグドルジ大統領との会談では、両国間のEPA(経済連携協定)締結に向けた協議を加速させ、石炭やレアアースなどの資源開発に日本が協力することなどを確認する予定だ。

モンゴルは親日国として知られる。大相撲には横綱・白鵬や日馬富士をはじめ、30人弱の出身力士が所属。数年前、同国内で世論調査を行ったところ、日本に「国として親しみを感じる」との回答は7割を超えた。

「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉参加表明を15日夕に終えると、安倍首相には月内に大きな外交日程がない。オーストラリアやニューカレドニア、パプアニューギニアなどの訪問も検討されたが、安倍首相が『モンゴルしかない』と判断した」(外務省関係者)

今週、中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)で、習近平国家主席と、李克強首相が選出された。尖閣問題では一歩も引く気がない安倍首相は「今後、(外交ターゲットを)中国に絞る」と周囲に語っており、モンゴル訪問は対中外交を優位に進める意図もあるようだ。

加えて、モンゴルはかつて社会主義国だったため、北朝鮮とも関係が深い。民主党政権時代にはウランバートルで、日本と北朝鮮との政府間(局長級)協議が行われたうえ、昨年末の衆院選前には、当時の野田佳彦首相の了解のもと、拉致問題解決に向けた秘密交渉も行われた。

このため、安倍首相のモンゴル訪問の裏に、北朝鮮をめぐる新展開を勘ぐる向きもあったが、官邸周辺は「まったくない。民主党時代とは違う」といい、続けた。

「民主党政権時代の秘密交渉には、朝鮮総連関係者が関与していた。どうも金銭の要求が相当あったようだ。政権交代後、北朝鮮側は別のルートから官邸に接触してきたが、安倍首相は『二元外交はしない』と突っぱねた。拉致問題を金もうけに利用する輩を排除する決意だ」

安倍首相は、中国や北朝鮮と正々堂々と対峙する構えのようだ。