安倍政権は、発足からわずか一カ月とは思えないほどのスピード感と実行力を発揮しています。豊富な経験を積んだ顔ぶれとベテラン政党は、即戦力としてあらゆる問題に適応し、外交においてもその姿勢を正しく修正しています。
中韓をはじめとして欧米メディアでは冷淡な評価をしているが、アジア全域の評価は至って高く、発展的な明るい政治姿勢として注目されている。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成25(2013)年1月28日通巻第3868号 を転載

米国の左翼メディアはまだ「従軍慰安婦」で日本を貶めているが
アジアの知的メディアは日本のアジア重視劇的転換外交を注目し評価

「日本は数十年にわたって自ら課してきた平和主義から脱しようと動き始めた」(アジアタイムズ、2013年1月26日)。この場合、英語のニュアンスの「平和主義」は「敗北主義」と訳した方が良いかも知れないが、その議論はここでは措く。
アジア太平洋、それこそ豪州からインドネシア、インドを含む広範なアジア地域において、日本は中国の台頭に、アジア諸国との連帯を模索し始めているとアジアタイムズが好意的に観た。

ニューヨークタイムズなど米国の左翼メディアはまだ「従軍慰安婦」で日本を貶めているが、中国、韓国の方をもつ反日家ジャーナリストの巣窟として、いまや同紙を評価する知識人はいなくなった。
アジアの知的メディアは日本のアジア重視劇的転換外交を注目し評価している。

「しかも安倍は長き平和主義の象徴だった憲法の改正を謳い、米国の同盟再構築を唱え、アジア諸国に共通の認識となった中国海軍力の脅威に構える」とアジアタイムズが続けている。

たとえば日本はカンボジアと東チモールにも軍事関連物資の援助を開始し、豪州にはハイテク防衛システムの技術を、ベトナムには潜水艦の供与も試みる可能性がある、と同紙は続けた。
伝統的に日本は首相が替わる度に米国へ挨拶に出向いたが、安倍晋三は米国より先にベトナム、タイ、インドネシアを歴訪したという積極的外交姿勢への転換は重要なターニング・ポイントだと指摘した。

▼アジア援助の中味が戦略的にシフトしている

タイには日本企業およそ8000社がすでに進出しているが、むしろ中国に出遅れていた中小企業のタイ進出をこれからも奨励する。
事実、安倍はバンコックでインラック首相と会見し、同国のインフラ整備に貢献したいとしてバンコクと地方都市を結ぶ新幹線の売り込みにも積極姿勢を示したほか、原発、チャオプラヤ河流域の治水対策への協力を申し出た。
日本とタイは、これからも貿易、投資の拡大を目指し、洪水対策、鉄道建設、人工衛星、情報通信分野でも協力を約束した。

とくに新幹線はタイにとっての大事業である。総額1兆円のプロジェクトは国際入札を行う。
最大の競合相手は廉価新幹線で押す中国である。

アジア太平洋の国々と「戦略的関係を深めることが地域の安全保障と安定に寄与し、それは日本の国益に繋がる」と安倍首相は行く先々で演説した。

ベトナムへ赴いた安倍首相は中国の海軍の横暴に対応するには、ステルス型潜水艦を所望しており、もし日本がこれをベトナムに供与するとなると、「劇的な変化」である。ベトナム訪問に際して、安倍は潜水艦供与を明言した形跡がないが、原発の供与は公約している。

ほかにインドと日本は海上保安庁同志の合同訓練を実施したおり、豪州とは09年以来、日米豪参加国による安保対話が進んでいる。
まさに日本は「敗北主義から脱皮、劇的な変化」に移行したというアジアタイムズのリチャード・ヘイダリアンの指摘は正鵠を射ているだろう(ヘイダリアンは中東専門家)

 
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