アメリカの衰退はかねてから予想されており、それが現実化してきた。軍事同盟国への影響は避けられない。
軍事と外交をアメリカに丸投げしてきた日本だが、それらをとり戻している安倍政権であったことが、せめてもの救いだ。アジア外交で大きな成果を得ている安倍政権だが、これは日本の先人たちが残した功績を、今になっても各国の人々が評価していることの表れだ。そしてそれを加速させた背景には、アメリカの衰退と支那へのアレルギーがある。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成25(2013)年10月8日 通巻第4039号 を転載

オバマ大統領のアセアン首脳会議、亜細亜サミット欠席の意味
これで米国の衰退が歴然となれば、誰が一番得をするか?

日本の報道によれば、オバマ大統領のアジア歴訪キャンセルでTPPの年内妥協が難しくなり、この間隙を縫って習近平がTPPつぶしに動いているという。
TPPは中国を加盟させて、事実上の解体に至れば、日本の国益に繋がるので、或いはベストの状況ではないのか?

さるにてもオバマ大統領が土壇場でインドネシアのアセアン首脳会議とブルネイのアジアサミット欠席にいたったのは、連邦議会の予算審議の乱戦、一部政府機能が停止され、米国は大混乱に陥没した。次に予測されるのは17日の赤字国債上限枠拡大が否決された場合である。
米国はデフォルトにいたり、つまり世界最強国家の財政が破綻する。

米国債1兆2000億ドル強の中国と1兆1354億ドルを保有する日本が、最悪の被害を被ることになるが、市場は「そんなことあり得ない」と楽観的である。
もちろんオバマ政権下、米国のデフォルトはあり得ないだろう。世界金融が大打撃を受け、システムが混乱するばかりか、通貨投機からゴールドなどへ換物投機、さらには原油、ダイヤなど商品投機へといたり、世界は高金利、インフレに襲われるのだから。

それでもなお、連邦議会共和党がオバマ予算を連続的に拒否している理由は、オバマの提案内容が出鱈目、かつ高圧的で、オバマケアをなんとしても議会を通過させ、他の予算を削減してもやむなし、とりわけ国防予算は目も当てられない惨状に陥る。

米国ばかりか同盟国の安全保障は近未来に確実に危殆に瀕することになるが、オバマは気にしている様子ではない。
いずれにしても米国の衰退は明瞭であり、日本は防衛に関していよいよ正念場を迎えることになるだろう。

 


 

宮崎正弘

リンク
宮崎正弘の国際ニュース・早読み
宮崎正弘のホームページ

<宮崎正弘の最新刊>
中国バブル崩壊が始まった