鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 第122号(10月6日) を転載

安倍外交を支えたもの

チャンネル桜の討論番組「メディアが語らない中国尖閣侵略の現実」に出演した。
http://www.youtube.com/watch?v=GTdWNbsM058&feature=youtube_gdata

番組でも触れているが、最近中国公船による尖閣挑発の頻度は減ってきており、鎮静化の兆しが見えている。日中首脳会談がいまだ実現しない段階においての鎮静化が何を意味するかと言えば、毅然とした対応を崩さない安倍政権に対して脅迫が通用しないと中国が悟ったとしか考えようがない。
安倍政権への支持率は依然として高く、そこには安倍政権の毅然とした外交姿勢への国民の共感が含まれていよう。安倍外交の勝利と言ってもいいのではないか。

7月から8月にかけて32日連続で中国公船は尖閣周辺で示威行動を実施した。露骨な脅迫であり国内では「安倍総理は尖閣の領有について中国と話し合え」という妥協論も沸き起こった。米国は東アジアから中近東に軍事力を動かしたい状況であり、日本と中国が戦争になったらそれができなくなるから、妥協論に傾かざるを得なかった。

つまり安倍総理は内外から中国への妥協を迫られていた訳であり、いつ妥協してもおかしくない状況だったのである。だがその安倍総理をして毅然とした対応を取らせ続けた力の源泉が何であったかと言えば、草の根保守の積極的行動であったろう。

草の根保守とは、安倍政権成立の原動力となった「頑張れ日本行動委員会」を中心とした保守系の国民運動であるが、尖閣周辺でいくたびか漁業活動を行い、そこが日本の漁場であることを内外に明示した。

日本の一部メディアは「日本の漁船が行くから中国の公船が侵入するのだ」として、この行動を非難したが、もとより日本の漁船がいないときにも中国の公船は侵入しているから、この非難は成立しない。

おそらく安倍総理の対中姿勢を支えているのが草の根保守だと見た中国が仕掛けた情報工作であろう。こんな工作に引っ掛かるメディアもメディアだが、要するに日本のメディアには大量の中国情報工作員が入っているということだ。

言うまでもなく、中国は尖閣を諦めた訳ではない。今後も陰謀と陽動を含めた作戦を展開すると予想される。今後も油断することなく、尖閣への公務員常駐化、南西諸島の防衛力強化そしてスパイ防止法制定に歩を進めていかなくてはならない。

 


軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)

鍛冶俊樹

1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、論文「日本の安全保障の現在と未来」が第1回読売論壇新人賞佳作入選。現在、日経ビジネス・オンライン、日本文化チャンネル桜等、幅広く活動。

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