政府が自国の利益を守るという、至極当然の政治が機能しはじめた。
安倍政権発足直前から国内外のメディアは相次いで安倍バッシングをはじめ現在進行中だが、ASEAN諸国からは概ね歓迎されている。欧米は安倍発言による円安を懸念した経済的理由がつよく、中韓露はそれに加えて領土問題と国内事情のはけ口として「強い安倍首相」を叩きたい。そして日本のメディアはそれらに追随する。

しかし、今のところは「発言」と「外交姿勢」のみで、予算ができているわけではない。実質的な行動に出た場合、いちはやく静かになるのは中国だろう。あの中共は崩壊する。
安倍政権による新たな取り組みに、大いに期待を寄せるところである。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成25(2013)年1月11日通巻第3857号 を転載

「アベノミックス」を歓迎しない米国、中国そして韓国
円安といっても、この程度なら製造業は海外へでるしかない

円とドルの適性レートはどれほどか、といえば計算の仕方で見解がいくつも分かれるだろうが、究極の目的を日本経済の再生、そのために雇用、国内空洞化回避、すなわち「チャイナ・プラス・ワン」の究極の目的地が日本であるという風に理解すれば、一ドル=120円辺りが適性であろう。

それはともかくとして日経株価平均をリップ・サービスだけで一万円台に回復させ、おなじく日銀への強いスタンスを安倍首相が見せただけで、一ドル=78円台から88円台になった。依然として全てはリップ・サービスの段階、予算はこれから、であるにも関わらず。

そして円安状況を歓迎しない国々からは、円安を批判せずに安倍政権批判を始めたところがある。英米、そして韓国。中国はもっか、沈黙だが、円安を歓迎していないことはいうまでもないだろう。

昨秋から日本の産業界の合い言葉は「チャイナ・プラス・ワン」である。
進出先を中国ともう1カ国か、弐カ国に生産拠点、物流拠点をおこうという切羽詰まった動きである。

第一は中国がなした忘恩行為(反日暴動)とあまりに理不尽な侮蔑的態度に、おとなしい日本人がこれ以上耐えることはないとばかり無言で企業を縮小、撤退させていることである。
げんに中国からの撤退は台湾企業のほうが早く、工場をまるまるベトナムへ移転させたケースもでている。
第二はドル高とともに、元高(一人民元は12.50銭から15円に急上昇している)となり、くわえて人件費の高騰ぶり。中国の魅力が急速に色褪せているからである。

▼日本の立ち位置の激変に繋がる

こうした状況を踏まえて安倍政権は迅速に舵取りを変えた。
年初、麻生副総理兼務財務相はミャンマーへ飛んだ。
大きく報道されなかったが、ミャンマーで日本は何をしたか。過去累積の貸し付け(円借款)5000億円のうち、3000億円をチャラとして、そのうえ残金2000億円も邦銀に帳簿を移し替えた。つまり過去の分は全額チャラ。あまつさえ新たに500億円の円借款を供与し、ミャンマーに最大の工業団体を造成するのだ。

「日本が防衛力強化のために改憲が必要なら反対しない」と激甚なラブコールは、フィリピンから上がった。岸田外相は、このフィリピン、シンガポール、ブルネイ、豪を訪問中だが、とくにフィリピンに巡視船十隻を供与することが決まった。

安倍首相は、もっとも中国に敵対的姿勢を取るベトナムを訪問する。
かつてベトナム戦争で殺し合った米国すらが空母を寄港させたり、その対中封じ込め軍事作戦を強化している最中であり、ミャンマーやフィリピン訪問よりも重要な意味を持つことはいうまでのないだろう。

安倍首相は、16日から19日まで、ベトナムの他にタイ、インドネシアを歴訪することが決まった。
両国はともに日本企業進出がもっとも激しいところであり、ともに親日的であり、且つ経済成長が著しい。

 
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