賛否が耐えなかったが、条約の名前は「水俣条約」となるようだ。
重要なことはこの教訓を世界に残すことだ。

くまにちコム 2013年01月09日 を転載

水銀鉱山の新規開発禁止 「水俣条約」案判明

12日にスイス・ジュネーブで始まる「法的拘束力のある水銀条約」制定のための政府間交渉委最終会合に提案される、条約案の詳細が明らかになった。

締約国は水銀と水銀化合物に関し、自国の条約発効日から、(1)新たな水銀鉱山の開発禁止(2)塩素アルカリ製造工程での使用は期限までに廃止(3)輸出入は締約国間の同意を条件に許可された用途以外は認めない(4)9分野の水銀添加製品を期限までに廃止-などが柱。

交渉では議長が示した条約案を審議し、廃止期限の設定や条文の修正、追加、削除、法的な詰めをし、最終日18日の合意を目指す。

条約案のうち水銀鉱山開発は、日本では1975年以降されていないが、海外では今も続き、大きな汚染源の一つ。塩素アルカリを扱う化学工場は、日本では水俣病発生で製造工程から水銀を使わない方法に切り替えた。しかし、多くの国で使用が続いている。

交渉では実効性と実現可能性がある規制を求める先進国と、柔軟な規制と資金支援を主張する新興国・途上国、水俣病再発防止を訴え厳しい規制を求める国際NGO(非政府組織)の間で激論が交わされそう。

NGOは条約案に盛り込まれた規制の適用除外や途上国への猶予条項の削除を要請する一方、水俣病の教訓として企業賠償に絡み、「汚染者負担の原則」などを盛り込むよう強く求めている。

大量排出国の中国、インドを抱えアジア・太平洋地域をまとめる日本は、水俣病経験国として「できるだけ多くの国が参加できる国際的な枠組みの確立がまず必要」(環境省)との立場。

合意すれば、条約の採択・署名の外交会議を10月に熊本・水俣両市で開くことや、名称を「水俣条約」とすることも決まる見通し。(井芹道一)

水銀条約案ポイント

  • 新規の水銀鉱山開発は認めない
  • 輸出入は締約国間の同意を条件に適正処分など許可された用途以外は禁止
  • 水銀添加製品として電池、スイッチ・リレー、電球型蛍光灯、蛍光灯、水銀灯、せっけん・化粧品、殺虫剤・殺生物剤、血圧計、体温計の9分野を特定。期限を決め段階的に廃止。その後は輸出入も禁止
  • 歯科用アマルガムの使用削減と水銀フリー充填材の使用を促進。妊婦や子どもへの使用を抑止
  • 塩素アルカリ製造工程での使用を期限までに禁止し、塩化ビニールモノマー製造工程での水銀使用を削減
  • 期限までの廃止には、事務局への書面通知で規制適用を遅らせるなどの適用除外措置を設ける
  • 大気・水・土壌への排出を削減
  • 途上国への削減技術と資金支援制度の創設
  • 汚染現場の特定と評価、リスク削減
  • 環境上適正な保管措置
  • 条約規程の推進と順守を審査する委員会設置
  • 水銀暴露を受けやすい人々を把握するプログラムの構築。世界保健機関(WHO)などの支援を得て保健分野などでリスク情報を共有