隣国にして親日的な台湾だが、親日的なのは国民世論であって、国の指導者は世界屈指の反日家である馬英九総統だ。
その支持率が11%という低水準に驚くところだが、自身の不人気から目を逸らしたいのか、国内外で人気の高い王金平国会議長の悪評を拡大して辞職を要求した。
だが、これを機に人気のある王金平議長を支持する世論が高まり、馬英九総統はさらに苦境に追い込まれる結果となりそうだ。「仲間のいない馬英九と敵のいない王金平との戦い」と揶揄する声も多い。
就任当初の馬総統に対しては、長年対峙してきた支那との関係を良好にしたと評価する声もあったが、それによって支那人勢力が台湾国内で影響を及ぼすようになり、国民の間では馬政権へのアレルギーが高まった。戦後の混乱期、国共内戦に敗れて台湾に逃げ込んできた国民党(支那人)が、台湾人に対して何をしたか、台湾人は忘れていない。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成25年9月13日通巻第4020号
を転載

台湾政界も「政変」。
王金平国会議長に馬総統が辞職を要求
王議長は「仮処分」申請で対応。行政訴訟法298条を根拠に

前代未聞の大混乱に台湾政界が陥没している。
なにしろ支持率11%しかない馬英九総統、議論をすりかえる為だろうが、王金平国会議長を引きずり下ろすという挙にでた。これを「減王計画」というそうな。
王金平は台湾政界有数の実力者にして、本省人政治家。マフィアとの繋がりを指摘する向きも多いが、国民的な人気が高く、ファンも多い。李登輝元総統との関係も良い。

具体的には9月10日、馬英九総統が「王金平議長の辞任を要求」したことに端を発し、その理由を「不当な司法介入」とした。国民党は、この動きを受けて、9月11日に王金平の党籍抹消処分をはやばやと決めた。

マレーシアから急遽帰国した王議長は司法介入の疑惑を否定し、むしろ捜査当局の電話盗聴を問題視した。また「仮処分」申請で対応することにして、行政訴訟法298条を根拠に「暫時権利保護」の仮処分を求めている。

ところが香港紙『明報』(9月13日付け)によれば、台湾国民党のなかの「新四大家族」が結集し、逆に馬下ろしに動き出しているという。
台湾の「新四大家族」とは連戦・国民党名誉主席(元副総統)、呉伯雄・国民党名誉主席、赫龍武・台北市長(閣僚級)、朱文倫(新北市長、閣僚級)の四大有力派閥の領袖たちである。

新四大家族は「26連隊」という暗号名の作戦を準備中で、同明報にしたがうと「2014年末の五大市長選(台北、新北、台中、台南、高雄)で国民党が敗北するとして、その責任を馬に取らせ、任期半ばで総統から引きずりおろす」作戦だという。関係者はいずれも、この明報の報道を否定している。

一方、当事者の王金平は記者団に対して「辞職しない。党を離れない。新党を組織しない。馬下ろしには加わらない」という四つのNOを打ち上げた。
一般世論の反応は、むしろ王金平に同情的で、国民党員でありながらも本省人の王が、国会(立法院)でしばしば国民党提案の法律を成立させないため、馬が苛立ち、邪魔者を排除しようとする権力闘争が本質であり、馬英九の陰険な遣り方、その政治的な動きを支持できないとする意見が強いという。

 


 

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