いつもながらとても分かりやすく解説してくれる鍛冶俊樹さんのメルマガです。
日本領である尖閣を中国がある日、突然「自国領だ」と言い出して領海に侵入していることである。自分で問題を引き起こしておいて「棚上げ」もないものだ。いうなればコンビニで万引きをして、店員に咎めらると「この問題は棚上げにしよう」と言っている様なものなのである。
と、とても分かりやすいです。
米軍を恐れる中国軍
中国軍の副総参謀長がシンガポールで開かれたアジア安全保障会議で2日、尖閣などの問題について「棚上げが賢明」と発言したそうである。一見譲歩とも取れる発言に引っ掛かるお人好しな日本人がいそうだが、中国の発言は実は支離滅裂である。
そもそも問題は何かと言えば、日本領である尖閣を中国がある日、突然「自国領だ」と言い出して領海に侵入していることである。自分で問題を引き起こしておいて「棚上げ」もないものだ。いうなればコンビニで万引きをして、店員に咎めらると「この問題は棚上げにしよう」と言っている様なものなのである。
さらに注目すべきは中国が「対話による解決」を主張している点だ。「話し合い」による解決といわれると納得してしまう日本人は多いだろうが、万引きした商品をポケットから出す事もなく「この商品の所有権については対話で解決しよう」などと言われて納得していたら、外交官どころかコンビニの店員も務まるまい。
さて実際にコンビニでこんな事を言う万引き犯がいるかどうかは知らないが、仮にそんな万引き犯がいたとしたら、「この問題は棚上げにしよう」という発言の真意は「警察を呼ぶな」ということであろう。そして「対話」により警察が来ない事を確認した後、奪い取る算段であろう。
国際社会でしばしば警察に擬せられるのが米軍である。アジア安保会議は各国の軍首脳が集まる会議であり、米軍首脳も参加している。今回の中国軍首脳の発言は尖閣のみならずフィリピンなど東シナ海、南シナ海の島々について発言していることから、やはりその真意は「米軍を呼ぶな」であろう。
米軍を国際社会において正義の味方とみなすのには、轟々たる反論があろう。だが中国が米軍を国際社会の警察と見なしているのが、今回の会議で期せずして浮き彫りになった。米軍はやはり東アジアに必要な存在である。他ならぬ中国がその必要性を逆証明してくれたのである。
軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、論文「日本の安全保障の現在と未来」が第1回読売論壇新人賞佳作入選。現在、日経ビジネス・オンライン、日本文化チャンネル桜等、幅広く活動。
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