「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成25年(2013)5月28日 通巻第3952号 を転載
タクラマカン砂漠の寒村が65万人の新都市となっていた
甘粛省の地震被災者や河南省の農地を失った農民が大挙して入植
新彊ウィグル自治区において地元ウィグル人が比較劣位になりつつある。人口動態で、漢族の比率がいまや40%(ウィグル自治区の人口は2200万人)。すべては新彊ウィグルへ強制移住させられた満州族と、革命後、毛沢東がおいやった人民解放軍の生産大隊、その家族、子孫。そして新しく入植してきた貧困層の漢族。
この列に王楽泉・前新彊ウィグル自治区書記時代に夥しい山東省の娘らを騙して「新彊によい就職先がある」といって移住させ、結婚を奨励した。生産大隊の軍人らが家庭を持ち、子供をつくったのは、こうした移民政策が背景にある。
これらの人々が、石油と瓦斯がでる砂漠に入植し、なんとタクラマカン砂漠にマンションをおったて、天山山脈の雪解け水を利用するための運河を開墾して、水道、電気のライフラインも整備させたのだ。
タクラマカン砂漠のほうぼうに入植者向けのマンションがたちならび、たとえばシヘジ(漢語名は石河子)という古い地図に載っていない田舎の村が、いまや65万人の都市となった。新移民が入植したためで、しかもシヘジの95%が漢族である。
また入植した新移民のなかには四川省大地震などで自宅をなくした甘粛省の被災者や、貧困な河南省で都市開発のため農地を失った農民が大挙して入植したという(英誌『エコノミスト』、2013年5月25日号)。これではイスラム教徒であるウィグル人と漢族入植者との心理的軋轢は解消される筈もないだろう。
新彊ウィグル自治区に駐屯する人民解放軍の生産大隊は、純粋な軍人が十万余。彼らが漢族の安全をまもり、ウィグル人を弾圧する暴力装置だ。
▼核実験場から石油、瓦斯、そして綿花とトマト栽培の農場になった
生産大隊の主力や新移民の漢族らは集中的にセツルメントに住み、綿花、トマト・ケチャップなどを生産する。ウィグル人との接触はほとんどない。
綿花は世界生産の四割、トマト・ケチャップの輸出量は世界市場の17%を占める。
もともとウィグル東北部のウルムチ、トルファン、ハミなどは瓜、西瓜、葡萄の産地として知られ、ワインの醸造メーカーも多い。しかし昨今は新移民によって、ウィグルは核実験場から産業構造の変化にともなって、砂漠における都市構造の激変ぶりが実現したのだ。
生産大隊の拠点となる地域は新彊ウィグル各地に分散するが、漢族が人口比で優位となった都市はウルムチ北方のウジアチュ、シヘジ(石河子)、ベイトン(北屯)、アラット、石油基地のコルラ(庫爾勒)北方のチエメンチュアンなどだ。
またイスラム原理主義過激派が多いとされるホータン周辺には人民解放軍38連隊と224連隊の駐屯地がある。
生産大隊が管轄する地区の総面積だけでも台湾の二倍もある。かくして東トルキスタン独立は遠い夢となりつつある。
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