「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24(2012)年2月6日通巻第3548号 を転載

日本政府、中国国債購入は拙速

日本が中国国債を購入する意味は?

日本が外貨特別会計枠から今年度中に7800億円を投じて、人民元建ての中国国債を購入する。昨師走の野田首相訪中で合意が成立した。
日中首脳会談で、温家宝首相は「中国は両国通貨の金融市場での発展推進を希望する」と述べ、日本が中国国債を買うことを歓迎した。日本国内では政財界ならびに財務省、日銀が静かに合意していた模様だが、マスコミでは殆ど議論がなかった。

しかし人民元建て中国国債を日本が買うとなると、その動きは確実に世界各国に広がる。人民元の国際化をダイナミックに支援することになる。
日本の目的は外貨準備の多様化、人民元での直接投資の後押し、さらには人民元の国際化支援というところだろう(ナショナリストからみれば反日色強い中国を支援するのは矛盾だが本稿ではその批判は措く)。

さてこのニュースに日本の「同盟国」、米国がどう反応したか?
もっとも懐疑的だったのはリベラル派のメディアで、たとえばニューヨークタイムズは、「世界第二位の中国と三位の日本が通貨協定に合意したことはドル使用から離れる動きの一部である」と強い懸念を行間に含めて、通貨戦略上の位置づけを試みた。

同時に「中国は人民元が世界的規模で通用することを望んでおり、(日本いがいの)多くの国でもドル以外の通貨使用を待ち望んでいるからである。中国はドルが世界中であまりにも過重に使われており、中国の勃興にともなって世界システムがもっと均衡ある通貨システムへ移行すると信じているからでもある」(12月26日付け)。

客観的事実を眺めると、日本との貿易パートナーは中国が一番、米国は二番目に後退しており、日中のビジネスの絆はこれからもますまる深まり、通貨システムの改善(就中、人民元での決済)は明らかに自然な、合理的な方向である。

ところが米国の一方的な解釈がNYタイムズの報道に展開された。
「日本にとって、とくに重要な意味を含む理由は過去に蓄積してきた外貨準備を米国国債で保有したためドルの減価に悩んできたのであり、円高によって日本製品はさっぱりアメリカの庶民から(高すぎて)そっぽを向かれた。さらに日本から見ればドルに対して人民元は40%も過小評価され、日本円に対しては45%も過小評価されている(この数式の立脚点は不明。アメリカUSTRあたりの計算だろう)。日中が貿易決済で直接的な取り決めで進めると、為替決済の煩瑣な再交換手続きが簡素化される。だが米国にとって、日中間のこうした通貨取り決めは、今後長きにわたってドル決済のボリュームが減少していくことを意味する。太平洋の周辺の国々が、この動きに加わるとなれば、中国の通貨が明らかに環太平洋の貿易決済上、影響力が強まり、世界基軸通貨である米ドルが重要性を徐々に失っていくだろう」

米国の懸念が日本の中国国債購入表明に露骨に出た。つまり日本は重要な同盟国の心象を悪くしたわけで、根回しを欠いた、拙速な決定ではなかったのか。

(この文章は『北国新聞』、1月30日付けコラム「北風抄」の再録です)

リンク
宮崎正弘の国際ニュース・早読み
宮崎正弘のホームページ

<宮崎正弘の新刊>
『世界金融危機 彼らは「次」をどう読んでいるか?』 (双葉新書、840円)
『2012年、中国の真実』 (WAC BUNKO、930円)
<宮崎正弘のロングセラー>
『中国大暴走 高速鉄道に乗ってわかった衝撃の事実』 (文藝社、1365円)
『中国は日本人の財産を奪いつくす!』(徳間書店、1260円)
『自壊する中国』(文藝社文庫、672円)
『震災大不況で日本に何が起こるのか』(徳間書店、1260円)
『中東民主化ドミノは中国に飛び火する』(双葉社新書、880円)