田母神俊雄オフィシャルブログ「志は高く、熱く燃える」
2011-11-05 を転載

被災地の応急復旧を急げ

東日本大震災の被害復旧が遅々として進まない。何故進まないのか。政府のリーダーシップが発揮されないからである。その前に政府自身がどうしていいのか分からないというのが正しいのかもしれない。10年はかかるとかいう人がいるが、我が国が戦争で焼け野原になったときでも10年後の昭和30年には復興は終わっていたのではないのか。原子爆弾が投下された広島や長崎も、大空襲で街中が焼かれてしまった東京などでも10年もかかっていない。あのときの被害は人的被害を含め、今回の地震と津波による被害をはるかに上回るものであった。10年かかるとか言っているのは、責任を問われないための政府の時間稼ぎだとしか思えない。

政府は復興構想会議なるものを立ち上げ、震災から3ヵ月半もしてから、あまり内容のない報告書を作らせた。あれによって何か上手く行くことになったのか。復興構想会議とかいうものは時間が十分にあるときにやるべきものであって、それを待って復興に取り掛かるというのは発想が間違っている。とりあえず復旧しなければいけないときに議論などしている暇はない。

政府には緊急事態という発想が著しく欠落している。

こんなときこそ政府は、決めたことを自衛隊に実行させるだけではなく、復旧計画を作るときから自衛隊の知見を活用すればよい。

航空自衛隊の作戦の一つに基地防衛というのがある。さらに基地防衛には4つの作戦区分があり、その一つに被害復旧という作戦がある。ミサイルや爆弾などによって、人員、装備品、基地機能などが被害を受けたときにその復旧をどのようにするのかということである。このとき取りあえずの基地機能を確保するために応急復旧を行って、事後状況を見ながら本格復旧を考えるのが自衛隊のやり方である。このとき応急復旧というのは元の形に戻すというのが基本である。どのような復旧を行うかなどと議論している暇はない。機能喪失間に再び敵襲を受ければ自衛隊は壊滅してしまう。その後応急復旧の見込みが立ったのならば、本格復旧について時間をとって議論すればよい。本格復旧はあくまでも応急復旧の見込みが立ってからの議論なのだ。

自衛隊は航空総隊などの大部隊になれば、当日の作戦運用を担当する作戦運用部が応急復旧を所管し、目の前の状況変化とは距離を置き、1週間後、1ヵ月後の作戦計画を作っていく作戦計画部が本格復旧を担当する。これらは別組織になっている。

今回の震災における政府の対応を見ていると、まさに応急復旧が出来ていないうちから本格復旧の議論をしている。応急復旧が必要なのにそれを考える人がいないで、本格復旧だけを考えている。京都大学の藤井聡教授が「列島強靭化論」(文春新書) の中で、自衛隊のやり方と同じこと言っている。血を流して死にそうな人がいるときに、医者を集めてどのような治療が一番いいかを議論しているようなものだと。取りあえずは出血を止める応急処置が必要である。

今回の震災で被災者は、一体どうすればよいのか悲嘆にくれることになったであろう。3千万円もの借金をしてようやく建てた我が家を津波で破壊されてしまって、ローンだけが残ったという人もいる。震災後時間が経っても街がどのように復興されるのか分からずに、仕事もなく止むを得ず遠くの町や県に転出することになった人も多い。

政府は震災に際して次のように言うべきだったのではないかと思う。「町をそれぞれの地方自治体の計画で元通りに復旧してください。その費用については政府が面倒を見ます」と。そうすれば被災者も町が元通りになるという共通認識を持つことが出来る。将来の生活設計も出来るというものだ。しかるにエコタウン構想だとかより安全な町へだとか言っていては、どのような復興がなされるのか分からない。また費用もどの程度面倒見てもらえるのかもわからない。将来の見込みが立たず、多くの人が被災地を去ることになって、町が復旧することは困難になる。そして日本人がいなくなった土地に中国人が住み着くとかいうことが始まっている。

復旧にかかる費用も国債を発行して日本銀行に買い取ってもらえばよい。そうすれば国債発行分の一万円札が市中に出回ることになる。一万円札が増えれば多くの人が使うようになって、景気も回復に向かう。国債は政府の借金であるが、国民から見れば資産である。子供や孫の世代に付けを残すというのは間違いであり、増税派が仕掛けている情報戦争である。日本は借金が多いのでつぶれるというのもウソである。国と国民の持つ資産も日本は世界一なのだ。さらに国は、個人と違って寿命が永遠だから、毎年少しずつでも借金を返す態勢さえあればつぶれることはない。

福島原発周辺の放射能の状況も人の健康にとって全く危なくないものである。放射線医学の専門家で福島が危険だという人はいない。原子力工学とかをやっている医学的知識のないいわゆるサヨクといわれる人たちが放射能の危険を煽っているだけである。政府はもっと放射線医学の専門家の意見を受け入れたらどうか。現状は、危険ではない福島を政府が先頭に立って危険であると証明しようとしているようなものだ。日本国が福島県民を虐めているのだ。今の放射能の馬鹿騒ぎは、2年前の新型エンフルエンザの時と同じである。あの時何百万人もの人が死ぬかもしれないと大騒ぎしたが、いつの間にか騒ぎは収まった。あの時も誰一人新型エンフルエンザで死んでいないにも拘らず大騒ぎした。今回の福島でも放射能で被害を受けた人は一人もいない。

今からでも遅くない。政府は「元通り復旧してください。それに必要な費用は政府が何とかします」と言えばよい。そして国債の発行で資金を調達すればよい。そうすれば各都道府県が力強く動き出す。復旧は迅速に進むことになるだろう。現在のように復興構想に合っているかどうか審査しながら金を出すようなやり方は復興を遅らせるだけである。時間がかかれば復興は次第に難しくなる。多くの日本国民が被災地を去ることになるからだ。
 

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