5月20日から開催されたNATO(北大西洋条約機構)にメンバーでもない日本が呼ばれたのは、やはりスポンサーとしてだった。
NATOは「アフガン治安部隊の維持にかかる費用の財政負担」を日本などに求め、日本は丁寧にその負託にこたえる声明を出した。

「貧困はテロの温床になる」という実情を考えれば経済援助は必要だろうが、それによって利権闘争や汚職が蔓延するというのも既知の通りだ。膨大な経済援助をしてきた中韓は日本にとってどういう国になったか。教養のない貧困地域にたやすく資金援助をすれば、それに甘んじて何とかせびり続けることで頭がいっぱいになる。紛争が絶えず、道徳的荒廃のなかにある地域に必要なのは、まず「医療」と「教育」だろう。お金を出す前に人と技術で支援するべきではないか。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24(2012)年5月22日通巻第3656号 を転載

NATO首脳会議はシカゴで

NATOのシカゴ首脳会議はアフガニスタンからの撤退を再確認し
嘗てのNATOは形骸化、機能不全が顕在化し、やがて廃棄物になるのか?

シカゴは大荒れだった。
NATO首脳粉砕を叫ぶ暴力的なデモが荒れ狂い、ボーイングは操業を停止した。
オバマ暗殺を狙ったとされるテロリスト数名が拘束され、オランド仏大統領は遅刻し、なかでも椿事はNATOに関係のない日本の外務大臣が呼ばれて、アフガニスタンへの拠金をねだられた。

「オバマの演説が終わる頃を計算してオランドが会場入りしたのは、フランス兵3400名の年内撤退で延期を要請するオバマに言質を取られたくない用心のため」(ワシントンタイムズ、22日)

この北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は5月20日から開催されたが、直前までキャンプディビッドではG8,野田ーオバマ会談もおこなわれた。

シカゴでのNATO首脳会議で何が決められたか。
ラスムセンNATO事務総長は「2018年に完成する欧州ミサイル防衛(MD)の初期運用の開始」を宣言した。これはNATOが増強中の「スマート防衛」の一環。

具体的にはイランの長距離弾道ミサイルに備え、イージス艦や早期警戒レーダーなどを連携稼働させて敵ミサイルを撃墜するという欧州全体の防衛構想である。
すでに初期段階では早期警戒レーダーをトルコに設置したほか米海軍のイージス艦2隻を地中海に配置している。NATO海軍本部はトルコのイズミール。

つぎにポーランドとルーマニアに迎撃ミサイルを配備するが、ロシアの反発が強く、イラン迎撃用という説明を疑っている。プーチン露大統領がG8を蹴飛ばした(代わりにメドベージェフ首相が出席)直接の理由がこれで、反逆としてか、オバマは九月のウラジオストックのAPECを欠席する。

▼アフガニスタンから「逃げ出す」ことを「撤退戦略」と言い換えて

さてNATO首脳会議では2011年のリビア軍事援助空爆行動でNATOは上空からの監視・偵察態勢の不備が明らかとなり、このためて無人機5機を購入する。他方、ラスムセン事務総長はシリア情勢に懸念を示したが、「NATOがシリアに介入する意図は全くない」とした。

加盟28カ国の首脳が出席したが最終日には「アフガニスタン撤退戦略」が議題となった。
NATO宣言は「国際治安支援部隊(ISAF)」のアフガニスタンにおける活動が2013年半ばまでに戦闘主体から、アフガン治安部隊、警察の訓練、支援主体に切り替わる基本方針を明記した。さらに2014年末までにISAFは戦闘任務を終了、アフガンに治安権限を移譲して撤退する。従ってNATOは「アフガン治安部隊の維持にかかる費用の財政負担」(41億ドルを想定)を日本などに求めるのだ。

だからNATOのメンバーでもない日本が呼ばれた。ほかに豪州も財政分担金1億ドルを表明した。インド、ブラジルなどは無関心だった。

玄葉外相はシカゴのNATO首脳会議でアフガニスタンに関する日本政府の立場を表明し、「2015年以降も治安維持のための(財政)支援を行う考えがある」とした。ただし、玄葉外相は「アフガン自身の治安能力の向上が不可欠だ。我が国は2015年以降も治安部隊に対し、適切な支援を継続していく」としたうえ、7月に東京で開催する「アフガン国際会議」で、日本以外の各国も資金支援を行うよう求めた。

イスファン・タルーハが書いた。
「NATOは世界最強の軍事同盟から西側の衰退を示すかのように退化し、廃棄物となるのか」(TIME、12年5月28日号)。

ヒトラーもソ連もいなくなったらNATOの存在意義は何かという問いにラムスセン事務総長は『コソボ、ソマリアの平和維持、イランへの備え、そして新しい安全保障上の脅威に対処する世界防衛のハブがNATOだ』と答えたが、それは対外的説明であってもNATO内部、とくに加盟国を十全に説得できない。リビア空爆で英仏は張り切ったが、しょせん米軍頼りだった。シリアには介入せず、NATOがインポであることを証明したし、そもそも米国は大西洋から太平洋に関心を高めている。NATOは無用の長物化するのか」。
こういう辛辣な見方をTIMEがしていることを銘記しておこう。

(註イスファン・タルーハはタイムの花形記者。エール大学卒業、アジア関係記事でTIMEのレポーターとして活躍中)

 

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<宮崎正弘のロングセラー>
『世界金融危機 彼らは「次」をどう読んでいるか?』 (双葉新書、840円)
『2012年、中国の真実』 (WAC BUNKO、930円)
『中国大暴走 高速鉄道に乗ってわかった衝撃の事実』 (文藝社、1365円)
『中国は日本人の財産を奪いつくす!』(徳間書店、1260円)
『自壊する中国』(文藝社文庫、672円)
『震災大不況で日本に何が起こるのか』(徳間書店、1260円)
『中東民主化ドミノは中国に飛び火する』(双葉社新書、880円)