水俣病、原爆症の経験を福島へ 熊本市でシンポ
水俣病と原爆症の経験を、原発事故が起きた福島へ発信するシンポジウム「福島原発事故にミナマタの教訓をどう生かすか」が2日、熊本市大江の熊本学園大であり、継続的な住民健康調査の必要性などを訴えた。
原爆症認定訴訟熊本弁護団(板井優団長)の主催。研究者ら5人が報告した。
矢ケ崎克馬・琉球大名誉教授(物理学)は「深刻な内部被ばくを無視する誤った考えが世界を支配している」と警告。県内の原爆被害者を健康調査した牟田喜雄医師は「生涯にわたる健康調査のためには、手帳を交付し医療費を保障することが必要」と提言した。
山口和也・熊日論説・編集委員は、水俣病の加害者が被害を過小評価してきた歴史を踏まえ、「被害をありのままに認めないと、福島では100年にわたって紛争が続くことになる」と指摘した。
多くの水俣病被害者を診察してきた高岡滋医師は、メチル水銀の汚染地域を行政が狭く限定していることから「福島では、被ばく地域全体で健康調査をしなければならない」と主張した。
「差別のあるところに公害は起こる」が持論の原田正純医師は、「原発が安全なら、なぜ都会に造らなかったのか。ここにも差別がある」と訴えた。
約300人が参加。最後に健康調査や情報公開の徹底、東京電力と国の責任による全面的な損害賠償を求める宣言を採択した。(石貫謹也)