「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成23年(2011)7月3日(日曜日)通巻第3358号 
 を転載

これほど白けた記念日はなかった
中国共産党創立九十周年記念行事を中国各地に見たが。

七月一日は中国共産党の創立九十周年にあたり、各地で壮大なイベントが行われた。庶民は完全にそっぽをむいて、誰も関心さえないという記念日となった。

重慶では市の中央にある人民広場。巨大なアーチ、例によって中国的色彩感覚は黄色と赤。広場は民主派の集会を禁止するかのように写真展覧会がでこでこと、いずれも毛沢東や朱徳、周恩来がいかに偉かったかの展示である。

驚いたことに誰も見ていないのだ。
人々があつまっていたのは広場の隣の木陰、歌の練習をしている。それも革命歌ではない。

革命聖地と言われるのは延安、南昌、鄭義、井岡山、重慶あたりだろうが、重慶でこんな調子。南昌でも広場にでこでこと写真展、成都から新幹線で南充という街へも行ったが、中央の公園で創立九十周年記念行事のデコレーションは同じ。ほぼ誰も見に来ていないのである。向かいにあるカルフールに買い物客が目立ち、FKFCに若者たちが。

脱線すると南昌では駅の切符売り場に「共産党員専用窓口」があって、おもわず笑ってしまう。
中国広しといえども、この尊大な党員エリート意識丸出しの駅の風景は珍しい。南昌こそは革命起義の記念するべき場所で、いまも封建的風土が残る街であるけれども。。。。

7月1日から、ちょうど学生が夏休みに入ったので各地の駅は芋を洗うかのような雑踏と大音響。
若者は政治に関心を示さずひたすら帰省の鉄道切符獲得に並び、おどろきは美人の女子大生が堂々と列の横からはいる。或いは並んでいる人に頼んで、自分のチケットも買って貰っている。
日本人女性に、このたくましき図々しさはないだろう。

中国的風景でいえば、「横入り屋」という稼業があり、並ぶ列のなかで待ちきれない人から注文をとり、別にひたすら並んでばかりいるおじさんに注文を渡して手数料をとる。それも一件30元ほど。
小生は30分から40分、切符を買うのに待つのが中国的常識と思っているので、横入り屋を横目に、風景をひたすら愉しんだ。

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