田母神俊雄公式ブログ 2010-12-13
武器輸出三原則を見直すべし を転載

民主党は、衆議院での絶対多数を確保するために、再び社民党と連立を組むことになった。連立に際し、社民党の福島党首から注文があり、菅総理はいったん流れが出来ていると思われていた武器輸出三原則の見直しを行わないことになった。武器システムの開発には、多額の経費がかかるため、近年においては多くの国が参加した国際共同開発が行われることが多くなり、我が国もこれに参加できるように、武器輸出三原則の緩和を行おうとしていた。

国際共同開発の例としては、イギリス、ドイツ、イタリア、スペインのヨーロッパ4カ国で共同開発された戦闘機ユーロファイタータイフーンがある。すでに、2003年から運用が開始されている。また、アメリカを中心として現在開発中の第5世代戦闘機F-35ライトニングがある。F-35は、レーダーに映りにくいステルス性能を持つ戦闘機であり、イギリス、イタリア、オランダなど10カ国が参加している。我が国はこれまで、武器輸出を厳格に考えており、このような国際共同開発にも参加できずにいたが、ようやく参加の見通しが立ち始めていた。

しかし、今回の民主党と社民党の連立により再び夢は消えてしまった。我が国の国力を強化する機会を失ってしまったことは、本当に残念なことである。国際共同開発に参加できなければ、我が国の防衛産業は世界の軍事技術から取り残される可能性が高くなってくる。ひいては、我が国の科学技術全般に対するマイナスの影響が懸念される。共同開発においては、多国間ですでに開始されているプロジェクトに後から参加しようとしても、枢要な部分の製造分担はすでに決まっており、技術的な見返りはほとんど得られない。我が国は早期に国際共同開発に参加できるように、武器輸出三原則の見直しを行うべきである。

我が国では、武器の輸出はいけないことだという認識が強いが、これは戦後の自虐史観のなせる業である。我が国以外には、武器輸出が悪いことだと思っている国は存在しないと言ってよい。武器を輸出することは、相当程度、輸出先の国を支配できるということである。近年の武器はコンピュータの発達により、そのシステムの半分以上はソフトウェアが占めている。ソフトウェアはいろいろな工作もし易い。極端な話が、製造後5年で動かなくする事だって簡単に出来てしまう。各国の軍人はそのことを十分に承知している。従って、武器システムである戦闘機、護衛艦、ミサイルシステムなどを輸出するということは、輸出先国に無言の圧力をかけ続けることになる。

現在、我が国は戦闘機、イージスシステム、ミサイルシステムなど主要装備品の多くをアメリカ産のものを使用している。これらのシステムは、アメリカの技術支援が無ければ動かなくなってしまう。口に出してそんなことが言われることはないが「言うことを聞かなければ動かなくするぞ」という無言の圧力を、常時受けているようなものである。武器輸出は外交交渉力の強化にも資すると思う。我が国は、武器輸出をしないことにより、我が国の外交交渉力を低下させていることに気づくべきである。グローバルスタンダードがこれほど声高に叫ばれる我が国において、武器輸出など自衛隊に関する事項に関して、全くグローバルスタンダードに近づこうとしないのは一体いかなる了見によるものなのか。

武器輸出の解禁は、現在、我が国が置かれているデフレ状況の改善にも効果があると思う。我が国は、自ら手足を縛っても冷戦崩壊までは世界の経済戦争に勝ってきた。しかし、冷戦崩壊後のこの20年間、世界のGDPが2倍になっているにも拘らず、我が国のGDPは全く伸びていない。この20年間は、世界の経済戦争で敗北を続けている。近年の我が国の経済、財政、金融などの政策が間違っているからではないかと思う。

無駄の排除や事業仕分けで、国の借金が返済できないことは、この10年以上の国家的実験で明らかである。景気を回復するためには、一時的に借金が増えたとしても、GDPを伸ばす方向に政策を転換する必要がある。GDPが伸びれば、やがて借金は返済できる。公共事業をどんどんやらなければならない。国の守りを強化する為にも、戦闘機やミサイルシステムなどの国産開発をやったらいいのだ。戦闘機の国産開発には我が国の製造業が中小も含めて7千社以上が参加する。そして、それは経費的には子供手当ての10%もあれば十分に可能である。これを我が国政府が決めただけで、我が国産業界は大いに活気付くに違いない。武器輸出が出来れば効果は最大になる。

 
田母神俊雄公式ブログ「志は高く、熱く燃える」