半世紀が過ぎ、今尚あらたな認定患者がでてくる水俣病。認定審査に必要な病院調査を死後17年間放置され、棄却になった溝口チエさんの記録をもとに、県側証人の中村政明医師が、チエさんの感覚障害とメチル水銀との関連を否定した。
だが、根拠については「あくまでも可能性である」とし、チエさんの近所で認定患者が確認された状況を表す地図を示されたうえで問いただされると「分からない」と、あいまいな表現に終始した。
明確な証拠に貧しいから認定できないというが、17年間放置してきた責任は逃れられないだろう。何を理由に調査を放置したのか、県はこれについて断罪されるべきだ。
くまにちコム 2010年12月14日
県側証人、水銀との関連を否定 水俣病溝口訴訟水俣病の認定審査に必要な病院調査を死後17年間放置され、棄却になった溝口チエさんの次男秋生さん(79)=水俣市=が、熊本県による認定を求めた訴訟の控訴審は14日、県側証人で医師の中村政明・国立水俣病総合研究センター総合臨床室長に対する反対尋問が福岡高裁であった。中村室長はチエさんの感覚障害とメチル水銀との関連を否定した。
中村室長はチエさんを診察した経験はないが、過去の記録から手足の感覚障害は腎機能低下による可能性が最も高いとし、メチル水銀との関連を否定。根拠をただされると、「あくまで可能性である」と強調した。
中村室長は、チエさんが受けたメチル水銀のばく露についても証言。チエさんの孫の毛髪水銀値から推測し、「水俣病を引き起こすほど高くなかった」と述べた。溝口さん側が「ただ一つのデータでそう言えるのか」と反論すると、「ほかにサンプルがない以上、そうとしか言いようがない」と答えた。
チエさん方の近所で認定患者が確認された状況を表す地図を示された上、「これでもばく露はなかったと思うか」と問われると、中村室長は「分からない」とした。
次回は来年2月28日。(石貫謹也)