いつもながら冷静で的確なご意見です。

田母神俊雄公式ブログ 2013-02-19 より一部抜粋

中国はいま日本と戦争する気はない

中国が尖閣諸島に攻勢をかけている中で、我が国では中国の挑発に乗ってはいけないという意見が強い。中国は何とかして最初の一撃を日本側に撃たせ、それを口実に戦争に持ち込もうとしているからだと言う。しかし、私は現段階で中国が日本に対する軍事侵略を考えているとは思わない。中国軍の現在の力では自衛隊には勝てないからである。

中国は本気で尖閣諸島の奪取に来ていることは間違いないと思う。しかし、戦争に至らない範囲で日本に圧力をかけ、戦争をせずに尖閣を掠め取ることを考えていると思う。中国には日本と戦争をする気はない。中国は、中国との戦争を避けたい日本が、その圧力に屈し尖閣の所有を諦め、熟し柿が落ちるように尖閣が中国の手に渡ることを狙っているのだ。中国にとって一番困るのは、日本政府が自衛隊を使うことを決断することなのだ。だから中国は、戦わずに勝つ、孫子の兵法を実行中なのである。

日中の軍事力を分析している多くの軍事専門家は、現在の中国軍の実力では自衛隊に勝てないと思っている。もちろん日本政府が自衛隊を使うことを決断できた場合である。自衛隊は剣を磨き、心身を鍛錬して待っているが、日本政府から自衛隊に対し中国軍の撃退命令が与えられなければ、出来ることもできなくなってしまう。海を越えて戦争が行われる場合、陸地の戦闘とは違い地形地物の活用は不可能で、まずはそれらの地域の航空優勢が絶対に必要である。現在のところ、中国空軍が尖閣諸島上空の航空優勢を取ることは不可能である。

そして海軍、空軍の戦闘では、護衛艦、戦闘機などの量的多寡ではなく、それらの性能が戦闘の勝利にとって決定的に重要である。兵器の性能が戦いの帰趨を決定するのである。第二次大戦で大活躍をしたゼロ戦が一万機あっても、空中戦で現在のF-15など1機に勝つことは出来ない。

また今日では戦闘機の能力を決めるのは、その速度、上昇性能、旋回性能などではなく、空中におけるリアルタイムの情報収集能力である。空における組織戦闘能力は、中国軍に比較して、自衛隊が圧倒的に優れている。また兵士の練度や航空機、艦艇などの稼働率も戦力発揮に大きな影響を及ぼす。これらも日本側が圧倒的に優れている。数量だけを見て彼我の戦力を判断することは、あまり意味がないことなのである。

中国の軍人たちもその辺は十分に分析ができていると思う。口では勇ましいことを言ってはいても中国軍がそれを実行に移すことは、ここ十年間はないであろう。中国軍が日本を軍事支配する能力を持つには最低でもあと十年はかかるからである。日本が将来における対中軍事力の均衡に向けてこれから努力をすれば、永久に中国はその能力を持つことは出来ないであろう。

さて、今回中国のジャンウェイ2級フリーゲート艦が、海自護衛艦「ゆうだち」に対し射撃管制レーダーによる電波照射を行った。マスコミなどでも大騒ぎになっているが、大騒ぎするほどのことではない。かなりの緊迫した状況があって、初めてミサイル攻撃が行われる可能性が出てくるが、今のような状況で突然ミサイル攻撃が実行に移されることはない。それをやれば当然中国は戦争をする覚悟が必要になるからである。

射撃管制レーダーの照射が直ちに危険であるというような報道がなされるが、レーダー照射自体が直ちに危険であるということはない。レーダーが照射されてもミサイルが発射されないように、安全装置が二重三重に設置されている。従ってミサイルを発射するという明確な意思がないまま、間違ってミサイルが発射されることはないと断言できる。我が国政府が射撃管制レーダーの電波照射を受けたことを公表したことは、中国の圧力が強まってきていることを国民にも知らせ、中国に文句を言う目的があったと思うが、すでに目的は達成したと思うので、もうそろそろ騒ぐのは止めた方がよい。騒ぎすぎると、また左翼が戦争が迫っていると善良な日本国民を煽り、反戦世論が強くなり、安倍政権が目指す強い日本の実現が困難になるからである。

中国はいま日本と戦争する気はない。軍事的にも準備ができていないし、戦争をやれば我が国との貿易も困難になり、それは中国経済の崩壊も意味している。我が国から工作機械や工業用原料を輸入しなければ中国の輸出貿易は成り立たないのである。日本がなければ中国経済が成り立たないというのが真実で、よくテレビなどで言われる中国がないと日本経済は成り立たないというのはウソなのだ。

 
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