休暇中の米軍兵士がレストランで食事中、店内で食べ物ををのどに詰まらせて意識不明に陥っていた女性を発見し緊急処置で女性の命を救った。この兵士は女性の家族たちや消防隊員から深く感謝され、後日表彰までされているが、これを沖縄の地元メディアは一切報じていない。米軍基地内で発行されている小雑誌に掲載されただけだ。
兵士が公道で交通事故でも起こせば、大きな写真と実名を記して一面記事になる。凶悪事件が起これば大規模集会が開かれ、ラジオは一般市民にデモへの参加を呼びかける。だが、人命救助などの貢献を報じることはない。これが沖縄の言論界だ。
以下、約1年ほど前に米軍基地内で発行された小雑誌の翻訳を掲載する。
海兵隊員、訓練を実践し日本人女性を救う
海兵隊航空支援第2大隊所属のエリック・J・ハンセン伍長は、北谷町美浜のレストランで友人のキャシー・リンカー、リサ・A・ヴァーヴィル、マエロ・ケインズと食事をしている時に、隣席でパニックになっているグループ客に気づいた。
「右側に座っていた家族連れを見ると、うち2人が、おばあさんの口の中に手を突っ込んだり、背中を叩いたりしていました」と話すリンカーさん。
女性は喉に何か詰まらせているんじゃないかと仲間に話しながら、どうやらその家族連れは助けを求めていることを理解した。
ハンセン伍長は、「事情が分かるとすぐ、女性のご家族にハイムリック法をジェスチャーで示しました」と話す。
ハイムリック法とは、食べ物などの異物を気道に詰まらせた時に用いられる救急処置のことだ。ハンセンは、イースタン・イリノイ大学在学中と海兵隊の新兵訓練でこの救急処置を学んでいた。
ハンセンが手でハイムリック法を示し、それを実行する意思があることを伝えると、家族は迷わずにうなずいて承諾した。
ハンセンは、まず女性の脈と呼吸を調べたが、どちらも止まっていた。リンカーさんとヴァーヴィルさんは、レストランのスタッフに救急隊を呼ぶように頼んだ。
レストランの従業員、新里秀幸さんは、「私が救急車を呼びました。他のお客さんや従業は、どうしていいか分からず怖くて近づけずにいました」と話す。
ハンセンは、「誰もがショックで動けずにいました。僕は、とにかくハイムリック法を始めました。女性の背中側で膝をつき、小さなご飯と肉のかけらが出てくるまでハイムリック法を続けました」と語った。食べ物が出てくると女性は呼吸をし始めたが、長くは続かなかった。
「女性があえぐのが聞こえ、彼女が僕の手を軽く握りました」と話すハンセン伍長。ケインズさんが脈を調べ、ハンセンに脈が非常に弱いことを伝えた。
その時までは、女性は回復したと思っていたのでハイムリック法を止めていたが、まもなく脈が再びなくなり呼吸も止まった。ハンセンはすぐさま2回目のハイムリック法を実施した。
「自分が抱きかかえたまま亡くなったら嫌だと思ったことしか覚えていません。ほぼあきらめかけた時に、大きな鶏肉の塊が彼女の口から出てきました。すると急激に脈が戻り、立て続けに咳をし始めました。それで、生きている、大丈夫だということが分かりました。」
新里さんは、「海兵隊員の方は、5分から10分は続けていました」と証言する。
ハンセン伍長によれば、2回目のハイムリック法が成功して女性が息を吹き返してから5分位で救急隊が到着したという。
リンカーさんは、「救急隊員が女性を運ぶハンセンにお礼を言っていました。ご家族は、彼の助けに本当に感謝しているようでした」「救命訓練は無駄にはならないということが分かりました」「あの日のように、まったく予想もしていない時に人の命を救うことができるのですから」と話す。
女性は救急隊によって病院に運ばれ、ハンセン伍長は後日、女性が無事回復したと知らされた。
(文・写真 アリサ・N・ホフファッカー上等兵)
元記事:MARINES The Official Website (2012年1月13日)
米海兵隊の公式ウェブサイト