鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 第95号

復活・拡大した日米同盟

安倍総理は今回の訪米の目的を「日米同盟の復活」と説明していたが、その目的は見事に果たされた。実は復活したばかりでなく拡大したと言っていい。

安倍総理は日米首脳会談後の講演で「日米同盟はアジアのみならず中東、アフリカの安定にも有効」だと述べた。首脳会談でも同様の見解を示したであろう。今、ワシントンの眼はアフリカと中東に集まっている。
バイデン副大統領はイラン問題に専心してきたし、ケリー国務長官、オバマ大統領は近々中東を歴訪する。そんな彼らが安倍総理のこの提案に跳び付かない筈はない。

日本の一般国民にとっては中東もアフリカも縁が薄いが、安倍総理は1980年代、父君、安倍晋太郎外務大臣の下で外相秘書官を4年務めていた。この間、イラン・イラク戦争が勃発しており、日本も石油確保の観点から独自の中東外交を推進している。安倍総理は日本の政治家としては珍しく中東情勢に明るいのである。
欧米では中東情勢を知らない政治家は外交を語る資格がないと考えられているから、安倍総理の話を聞いて、オバマもバイデンもケリーも「安倍となら世界戦略を語り合える」と思ったに違いない。

面白かったのは岸田外相とケリー国務長官の共同記者会見の模様だ。日本と世界戦略を語れる喜びに満ちたケリーと日米同盟の拡大に圧倒された感のある岸田の表情は対照的だった。

1980年代、日本と米国、欧州はソ連封じ込めで協力体制を築き、結局ソ連を崩壊させた。これからの封じ込めの対象は中国・北朝鮮・イラン・パキスタン・シリアであろう。これらはハンチントンがイスラム・儒教コネクションと呼び、パキスタンのカーン博士が核兵器の闇市場と呼んだ国々である。

TPPについてはGATT(関税と貿易の一般協定)の交渉経緯を振り返れば明らかだが、例外品目が認められた段階でもはや形骸化したと見ていいだろう。


軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、論文「日本の安全保障の現在と未来」が第1回読売論壇新人賞佳作入選。現在、日経ビジネス・オンライン、日本文化チャンネル桜等、幅広く活動。

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