社会問題の根底に潜む最も深刻な原因は、こうした公的機関にはびこる権力主義だ。自らの作った物語を完成させるためのゲームをしている。水俣問題を長期化させた要因はこうした悪しき者たちの公権力だ。
「棄却妥当と証言を」 水俣病診断医師に環境省
水俣病関西訴訟の最高裁判決で被害を認められた大阪府豊中市の女性(87)が熊本県に患者認定を求めた訴訟の控訴審で、環境省が、女性を水俣病と診断した医師の意見書の証拠提出を見送り、さらに証人として「(棄却処分とした)認定審査時の判断は妥当だった」と証言するように求めていたことが、26日分かった。
女性は最高裁判決後も認定申請を棄却されたため、2007年に提訴。12年4月、控訴審で逆転敗訴し上告した。女性の弁護団は26日、医師の意見書を最高裁に提出し、「フェアではない」と同省の対応を批判している。
環境省は訴訟当事者ではないが、水俣病認定が法定受託事務であることなどから訴訟に参加している。
弁護団によると、証言を求められたのは新潟水俣病の臨床経験があり、順天堂大客員教授などを務める佐藤猛医師(80)=神経内科。大阪高裁で係争中の11年6月、環境省から証人出廷を要請された佐藤医師は、過去の検診記録などから女性を水俣病と診断した意見書を作成。これに対し、同省は「認定審査会の判定は妥当だったと証言してほしい」と求めたが、佐藤医師は「1回目の認定申請(1973年)に関する審査会から終始、水俣病と診断するのは可能」と拒否したという。
佐藤医師は、3月15日に最高裁の口頭弁論があるのを知って弁護団に接触。「患者の病気の苦しみに同情を禁じ得ず、裁判の判定にも納得できなかった」と説明したという。
環境省特殊疾病対策室は「係争中で個別の内容についてはコメントできないが、少なくとも虚偽の証言をするよう要請した事実はない」と話している。
(石貫謹也、渡辺哲也)