日本の誇る技術力は、火力を使わない強力な武器として政治経済に大きな影響を与える。日本の衛星技術が東南アジアに輸出されていくことで得られる経済と外交の利益は大きなものだ。NECの「人工衛星工場」は官民あげてのプロジェクトにすればいい。
NECが「人工衛星工場」新設 新興国に輸出
NECは7日、府中事業場(東京都府中市)に人工衛星の試験・組み立て工場を新設すると発表した。投資額は約96億円。経済産業省が補助金を出すため、NECの実質的な負担額は約76億円になる。東南アジアなどへの衛星輸出を加速し、2020年度に宇宙関連事業の規模を現在の2倍の1000億円に拡大する。
新工場は4階建てで延べ床面積が9900平方メートル。宇宙空間を疑似的につくりだすスペースチャンバーと呼ばれる大型試験装置に加え、最大26メートルの高さを持つ作業室がある。小型から中大型まで幅広い衛星の製造に対応する。13年3月に着工、14年6月の稼働を予定する。
新工場が完成すれば、衛星の姿勢制御にかかわるコア部品の製造や衛星の組み立て、耐久試験が自社で一貫対応できる。衛星の製造能力は年8基に増える。試験施設を借りる費用や衛星の運送費を抑え、製造コストを1~2割ほど減らせる。
NECは重量で1トンを下回る小型の観測衛星に強く、はやぶさなど特殊な宇宙探査に使う科学衛星でも豊富な実績を持つ。今後は災害監視や海岸浸食の調査などに使う観測衛星で、東南アジアを中心に需要を開拓する。新工場の建設で中大型衛星まで視野に入れた営業活動が展開できるとみており、宇宙事業の海外売上高比率を4割程度まで引き上げる考えだ。