米中韓露の日本に対する共通認識は、「日本は経済力を持った弱い国であってほしい」ということだ。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24(2012)年12月25日 を転載
「安倍氏、日銀へ『最後通牒』」(英紙フィナンシャルタイムズ)
「安倍氏、円安が望ましいと明言」(米紙ウォールストリートジャーナル)
日本がいよいよ変わると期待を寄せる欧米各紙、中国は警戒気味だが挑戦的言辞もすくなく、誹謗中傷的な論調は、目下の所、消えている。北京は安倍政権になにがしかの話し合いの突破口を見いだそうとしている。
ジェトロの調査では日本企業のなかで中国投資拡大方針と答えたところは前年比14%減。殆どが現状維持組で、同時に多くが「中国以外」に進出先を考慮していることが判った。これも円安に進めば、国内への環流が増えるだろう。米国でさえ、中国工場はコスト高となり、米国へ戻る企業が目立つようになった。
もっとも大事なポイントは国内空洞化をとめることであり、雇用の確保である。『円高』を放置すれば、日本の空洞化は、ますます若者の就職難をうみ、日本丸そのものが沈没する危険性に直面するだろう。だから安倍総裁は「一ドル=90円前後が当面、望ましい」と具体的な発言をした。欧米の市場関係者は微妙な反応、日本が正月休みに入る直後から通過相場に急変動がおきる可能性がある。
英紙フィナンシャルタイムズ(2012年12月18日付け)は安倍政権の誕生の勝因は「尖閣問題」であると示唆した上で「安倍氏が日銀に2-3%のインフレ目標の設定と要求したことは『良いアイディア』であり、日銀の独立性を傷つかないで実行可能」と評価した。
米誌ウォールストリートジャーナル(17日付け)は「日銀が国債を引き受けて通貨供給量を高めよと安倍次期首相は野心的な経済再生プランを掲げたが、デフレに歯止めがかからないのは資金需要が低すぎるからだ」と、さすがにウォール街の利益を前面に出して日銀政策を側面支援の論理を展開した。
米国は日銀がマネーサプライを増やすことに賛成していない。
そのうえで同誌は「経済成長に見合うマネタリズムよりも、規制緩和や貿易の自由化のほうが有効だろう」と米国流の身勝手な論理を演繹してTPP参加を躊躇う自民党への疑義を呈した。
まったくウォールストリートジャーナルは『余計なお世話』である。
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