国連環境計画(UNEP)がめざす水銀規制の国際条約の名を「水俣条約」とすることに、地元の水俣市議会は反対意見を可決した。半世紀以上に及ぶ風評被害がさらに続くことを危惧している。その一方で、水俣病問題の教訓を世界に発信するためにその名を冠したい政府側の方針がある。

福島では原発事故以来、世界中のメディアが「フクシマ」を連呼し、事故の影響を受けていない山間部の農作物までが被害を被る風評となった。この福島の現状にいちはやく反応し、風評被害の是正を呼びかけたのが水俣市だった。かつての水俣病問題の教訓を生かすべきときだったが、現在の被害者と過去の被害者が助け合うという状況ではその効果を得ることはできなかった。

政府は水俣尿の教訓を発信するために「水俣条約」としたい考えがあるようだが、福島の風評被害に何ら対応しなかった政府にその資格はない。まず、次期政権は過去の誤った政治を正す責任がある。

くまにちコム 2012年12月19日 を転載

「水俣条約」に反対 水俣市議会が意見書可決

水俣市議会(定数16)は19日の本会議で、国連環境計画(UNEP)が2013年10月の採択を目指している水銀規制の国際条約について、条約名を「水俣条約」とすることに反対する意見書を賛成多数で可決した。

意見書は「水俣と冠することで風評被害が続くとの市民の意見が根強い」と指摘。「水俣病の原因物質が有機水銀と特定されてからも病名が変えられず、市民が風評被害にあってきた。条約名について地元には多様な意見がある」として、水俣と冠しないよう求めた。

意見書は議会の7会派のうち4会派の代表者名で提出。討論で提出側の議員は「水俣イコール公害のイメージが定着する。新たに差別を助長する条約名であってはならない。原因が多岐に渡る水銀被害が水俣病に限定される」と主張した。

これに対し、水俣条約を肯定する議員からは「市民はつらい思いを乗り越え、世界に誇れる水俣を目指してきた。逃げてはいけない」「子どもたちも水俣の名に自信を持っており後押しすべきだ」「水俣病は終わっておらず、被害を人類が忘れないよう思い起こしてもらう必要がある」などの意見が出た。

採決の結果、賛成9で可決。宮本勝彬市長は終了後、「環境再生を世界に発信するため水俣の名を冠したい気持ちは変わらない。条約名で風評被害が起こるとは思えず、引き続き理解を求めていく」と述べた。

政府は、水俣病の教訓を発信するために水俣条約としたい考え。条約名は13年1月、スイスでの政府間交渉委員会で正式決定する。(辻尚宏)