オスプレイが尖閣を守る
「沖縄へのオスプレイ配備と東アジア戦略環境」というテーマでチャンネル桜に出演した。
今月13日に米軍の輸送機オスプレイが米フロリダ州で訓練中に墜落した。同機種が8月に沖縄に配備される予定なのだが、沖縄県などが配備の中止を防衛省に要請した。
こうした事故があれば通常だと配備延期ぐらいにはなりそうなものだが、米軍も防衛省も延期しない方針である。何故ならこのオスプレイこそ尖閣諸島を中国の侵攻から守る切り札だからである。
尖閣諸島には飛行場がない。従ってヘリコプターが人員の空輸に適しているが、ヘリの欠点は速度が遅く、航続距離が短い。その点オスプレイはヘリの様に離着陸でき飛行機のように飛べる。
オスプレイの行動半径は約700km、沖縄―尖閣が約440km、尖閣―中国福建省は約370km。ちなみに中国は福建省に新たに空軍基地を建設中だ。
侵攻のシナリオの一例を挙げれば、中国漁民が漂流したと称して島に上陸してしまう。日本の警察が排除に乗り出そうとすれば、漁民の保護を口実に中国軍が上陸する。自衛隊はこうした場合に備えて尖閣奪還作戦を策定しているが、実際にやれば日中全面戦争に発展しかねず、現民主党政権がその決断が下せるかは疑問だ。
つまり島に中国軍の上陸をたとえ少数でも許してしまえば、そのまま奪取されてしまう公算大である。従って米軍は中国軍がその動きを見せれば、機先を制して海兵隊員を尖閣に上陸させる。要するに上陸を先にした方が勝者なのである。オスプレイがこの作戦に最適であることは明らかであろう。
中国はこの秋に胡錦涛主席の任期が終わり指導者が交代する。この権力の空白期間を利用して軍は尖閣侵攻を画策していると伝えられている。米軍がオスプレイの配備を急ぐのにはこうした背景があるのである。
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今週発売の「歴史読本八月号」に執筆した。特集「陸海軍航空部隊全史」の中でドイツの第一次世界大戦時の撃墜王レッドバロンことリヒトホーヘン。そして星の王子様の作者として有名な飛行作家サンテグジュペリ。この二人の評伝を書いた。
おそらく大空へのロマンを掻き立てた点ではこの二人に勝るパイロットはいないだろう。短い評伝だが、中味は濃いと自負している。この二人を語ることなくして航空史を語るなかれ。是非ご一読を乞う。
http://www.jinbutsu.co.jp/rekidoku/
軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、論文「日本の安全保障の現在と未来」が第1回読売論壇新人賞佳作入選。現在、日経ビジネス・オンライン、日本文化チャンネル桜等、幅広く活動。
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