住民の意見を尊重するとはいえ、主権防衛は国家の決定事項だ。現在に至るまで、日本の最西端に位置する与那国島に自衛隊を配備しなかったのは国の不作為といえる。
台湾が政権交代によって中国寄りになり、尖閣諸島では中国による領海侵犯が問題視されるなか、与那国では島民の意志として、自衛隊配備を政府に要請した。だが、ここにきて自衛隊配備反対派がその賛否をめぐって住民投票にかける活動をはじめた。反対派の崎原議長は「大事なことはみんなで決めよう」などというが、国家主権に関わる事案を1600名ほどの住民の意思で決めることはできないだろう。住民投票で主権防衛の是非を決定できるとするなら、それは日本からの独立を宣言するに等しい。有事の際、軍隊経験のない僅かな島民に銃を持って戦えというのか。

各メディアでは賛否の数を論じているようだが、問題の本質は多数決ではなく、保護を求める国民が一人でもいれば、それを国力で守るのが国家の役割ということだ。

八重山毎日新聞 を転載

住民投票条例案を提出 「自衛隊誘致」で改革会議

署名運動経て7~8月実施へ 与那国町

【与那国】与那国町への陸上自衛隊沿岸監視部隊配備に反対する与那国改革会議(崎原正吉議長)は4日午後、自衛隊誘致の賛否を問う住民投票条例の制定に向け、条例案と直接請求の要旨を外間守吉町長に提出した。町は条例案や要旨の中身を精査、不備がなければ県議選終了後の11日以降に町選挙管理委員会に提出する。問題がなければ告示、1カ月間の署名活動が行われる。そこで条例制定の請求に必要な有権者の50分の1以上の署名を集まれば議会に直接請求、住民投票を実施する。これは早ければ7月後半か8月上旬になる見通し。

条例案の提出を受けた外間町長は、「20日以内に選管に資格要件が整っているかなどの審査をお願いし、適正であれば告示する」と回答した。
与那国改革会議は、町議会で誘致賛成派が反対派を上回っていることから、署名運動にあたって町議会の解散を求めることができる3分の1以上を目標としており、崎原議長は「大事なことはみんなで決めよう」として、「運動期間をフルに使い、目標以上の署名を集めて条例案を制定させたい」と強調した。

住民投票は昨年、反対住民が町に提出した署名が賛成派(514人)を上回る556人となっていることや、防衛省、衆院沖縄北方特別委員会でも「地元の理解が得られるよう尽くしたい」と回答していることなどを挙げ、「住民の声を切り捨ててはいけない」と投票実施を訴えている。
崎原議長は「町民が熟考し、一人一人の意思を明確に表明する機会を創出するとともに、島の民意を適正かつ正確に明らかにする必要がある」と強調した。

これに外間町長は「自衛隊誘致については既定方針通り進めていくが、これだけの反対の声があることは無視できない。住民自治を預かる者として、その意見をくみ入れ、所定の手続きを取れば住民投票もやぶさかではない」と受諾した。