5月1日、水俣病犠牲者慰霊式が水俣湾埋め立て地で行われた。
被害者からは「水俣病の教訓を、福島第1原発事故への対応に生かすべきだ」との訴えが相次いだという。
「風評被害」という共通の問題に苦しみ、55年たって法律上の和解が成立したとはいえ、癒えることのない思いである。
その苦しみをのり越え、現在東北地方に向けられている「風評被害」に警笛を鳴らす。

くまにちコム 2011年05月02日を転載

水俣病の教訓、次世代へ公式確認55年慰霊式

水俣病の公式確認から55年を迎えた1日、水俣病犠牲者慰霊式が水俣市月浦の水俣湾埋め立て地で開かれ、患者・遺族、市民、行政、原因企業チッソの関係者ら約650人が参列し、環境破壊への反省と地域再生を誓った。一方、被害者団体からは、水俣病の残された課題の解決を求める声が相次いだ。

慰霊式は患者団体などでつくる実行委と市の主催。親水護岸の水俣病慰霊の碑前であった式では、2010年度中に亡くなった認定患者のうち、申し出のあった5人の名簿が奉納され、地元中学生の鐘の音を合図に黙とう。参加者は献花台に菊の花をささげ、亡くなった人々の冥福を祈った。

患者・遺族を代表して市立水俣病資料館語り部の緒方正実さん(53)=水俣市月浦=が「祈りの言葉」を朗読。「今後も、水俣病の事実と真実を世の中に伝え続ける。私たちの世代が問題を解決し、次世代に教訓を引き継ぎたい」と誓った。

東日本大震災復旧への補正予算案審議のため、国からは松本龍環境相に代わり近藤昭一副大臣が出席。「被害拡大を防げなかったことをあらためておわびする。水俣病問題への取り組みはこれからが大切。国として責任を持って解決に全力を挙げる」とのメッセージを代読した。蒲島郁夫知事は「被害者救済はもとより、地域の保健、医療、福祉の充実、地域の持続的発展に力を尽くす」と語った。

式に先立ち、近藤副大臣は水俣病被害者団体の代表らと懇談。被害者からは「水俣病の教訓を、福島第1原発事故への対応に生かすべきだ」との訴えが相次いだ。(辻尚宏)