スイスでは、11月28日の国民投票で、「重罪を犯した、または社会保障を悪用した外国人の滞在許可証を自動的に取り上げる」というイニシアチブが承認された。

日本でもこれぐらいの論議があってしかるべきではないか。第2世代以降の人たちには迷惑なことだろうが、狭い国土に1億3千万の人口を抱える国であり、地理的にも法的にも不利な状況のなかで綺麗ごとばかり言ってられないだろう。

サーチナ 2010/12/03(金)
外国人犯罪者の国外追放強化承認にショック─スイス

11月28日の国民投票で、「重罪を犯した、または社会保障 を悪用した外国人の滞在許可証を自動的に取り上げる」という右派国民党のイニシアチブが承認されたことで、多くの外国人、特に移民の第2、第3世代が不安感を覚えている。

移民の第2、第3世代を代表する組織「セカンドス・プラス(Second@s Plus)」は、「スイスでは外国人は望まれておらず、疑いの目を持って見られている」というメッセージを発表した。 

憤りと不信感 

ベルンのスペイン移民援助組織の秘書ジョゼ・ライムンド・インスア・メンデス氏も、スイス国籍を持たないスイスで生まれ育った移民の第2世代が特に、今回の投票結果を心配していると話す。「直接民主制は素晴らしいが、最近スイス人は本能に頼って投票し、理性に欠けている。非常に危険な方向だ」

外国に住むイタリア人を支援するイタリア政府の組織の会長、パオラ・ダ・コスタ氏も、今回の選挙は(外国人に対する恐れや不安感といった)感情的な反応だと言う。「ショックを受けた。スイス人が何を望んでいるかはよく理解できる。しかしこの承認は解決には繋がらない」

52の外国人組織を包括するローザンヌの外国人フォーラムの会長、ティディアンヌ・ディウワラ氏は、組織を代表して「憤り」と「不信感」を表明。「人口の2割を占める外国人は、スイスに完全に融和している。この融和状態が停止するとは考えられない」と言う。また、今後こうした投票がある場合は、政府も外国人グループも国民に説明する機会をもっと持たなければならないと付け加える。

融和化は確かに問題

一方、ローザンヌ大学の政治学者バスキム・イセニ(39歳)氏は、この投票結果を「非常に残念」とコメントとした上で「反外国人」の旗印を掲げる国民党(SVP/UDC)と十分に闘えないほかの政党の無力さを強く指摘する。

また自身もコソボ出身の両親を持つイセニ氏は「外国人の融和化には確かに問題がある。しかし、外国人犯罪者を敵に回してこうした形で国外追放するのは、間違った解決方法だ」ときっぱりと言う。

この投票結果に同調する外国人もいる。ヴァレー/ヴァリス州の小さな町モンテ(Monthey)のトルコ人協会長フェルハット・アイディン氏は「外国人犯罪者の国外追放強化に、自分だったらやはり賛成票を投じたと思う。外国人ならその国にできる限り融和していくのが当然。これは出身国にも、現在住む国にとっても最良の方法だ。融和せずに暴力に走り、ましてや罪を犯す外国人が罰せられるのは当たり前」と語る。

イニシアチブの今後

今後の課題は、「罪を犯した外国人の滞在許可証をすべて自動的に取り上げる」というイニシアチブをいかに具体的に法律に移し変え、実行していくかだ。

「イニシアチブの内容を法に適用する場合、国外追放が『自動的に』行われないことを望む。特に移民の第2世代にとっては、スイスこそが本国、つまり唯一の国なのだということを考慮して欲しい」と「セカンドス・プラス」のイヴィカ・ペトルシック氏は強調。

スイス・トルコ協会の会長カラマン・ツナボイル氏はより楽観的で、「今回の投票結果が問題を引き起こすとは思えない。国民の半分はこうしたイニシアチブを否認したわけだし(52.9%の投票者で承認)・・・イニシアチを提案した側が、国民の感情に訴えたことは明らかで、従って社会民主党(SP/PS)のシモネッタ・ソマルガ法相が正しい方法で法に適応してくれるはずだ」と言う。

一方、スイスの新聞は、スイス国民は外国人に対しての不満をこうした投票で表明はしたが、実際イニシアチブを国内法に適用するとなると、スイスが調印する人権の国際法やシェンゲン協定などとかみ合わず、今後多くの法的レベルでの困難が生じると指摘する。

「投票するときは、国民はいつも正しいと思っている。しかし直ちにイニシアチブがそのままでは法に適用できす、民主主義の国が従うべき数限りない法的な束縛に繋がっていくと気付くはずだ。従って、外国人犯罪者問題のファイルはまだ、閉じられてはいない」とスイスフランス語圏の日刊紙「ル・タン(Le temps )」は結んでいる。(情報提供:swissinfo.ch)