田母神俊雄オフィシャルブログ 2012-08-26 を転載

尖閣諸島訪問記

8月18、19日の2日間で、尖閣諸島領海内で集団漁業活動を実施した。目的は漁業活動とともに、大東亜戦争尖閣諸島戦時遭難事件の慰霊祭を行うことであった。

本活動は、日本の領土を守るため行動する議員連盟(領土議連)、領土を守る地方議員の会、頑張れ日本!全国行動委員会 (以下、頑張れ日本)の協同主催で行われたものである。領土議連からは山谷えり子会長、新藤義孝、向山好一、長尾敬議員など8名が参加された。地方議員の会からは、会長である都議会の小磯明議員、東京都の松浦芳子杉並区議、小坂英二荒川区議、茨城県取手市の小嶋吉浩市議など16名が参加された。頑張れ日本からは、田母神、水島幹事長など10名ほどが参加した。その他公式サイトで募集した一般参加者100名弱の総勢150名、21隻の洋上慰霊祭であった。

尖閣諸島戦時遭難事件というのは、1944年7月に石垣島から台湾に疎開する2隻の輸送船が米軍の航空攻撃により被弾し、多くの人が亡くなり、助かった人たちが尖閣諸島に一時避難した事件である。避難後も食料不足などにより亡くなる人がいて、合計80名ほどの人が亡くなったということである。これらの人たちの慰霊碑は、我が国政府の方針により尖閣諸島には設置できないため、現在石垣島に設置されている。私たちは尖閣諸島洋上慰霊祭出発前に、石垣島の尖閣諸島戦時遭難者の慰霊碑の前で、18日夕方6時から事前慰霊祭を実施した。

尖閣諸島の慰霊祭は、魚釣島に上陸して行うべきであると考え、私たちは領土議連を通じて日本政府に魚釣島上陸の申請を行ったが、却下された。そこで止むを得ず、魚釣島灯台前の海岸から50メートル手前で洋上慰霊祭を行うことにした。慰霊祭用に漁船を借り上げ、石垣島から14隻、宮古島から4隻、与那国島から3隻の漁船が出港することになった。

私は山谷議員、小磯議員らと同じ船で石垣島から8月18日の夕方8時過ぎに出港して尖閣諸島魚釣島に向かった。8時間ほどの時間をかけ、翌8月19日の早朝、21隻の船が魚釣島周辺の海に到着をして日の出を待った。私たちの船には沖縄県護国神社、波の上宮から3人の神主さんたちも同乗しており日の出とともに洋上慰霊祭を行うことにしていた。

やがて神々しい旭日が上り、白装束の神主さんの先導で船上で慰霊祭が始まった。爽快な気分になり日本の島尖閣諸島を中国などに盗られてなるものかという気持ちがこみ上げてくる。東京から那覇経由で石垣島に行き、石垣島から船で8時間の時間をかけて、はるばる尖閣の海にまで来てよかったという思いが強くなっていった。私は自衛官時代に2回、6年の沖縄勤務があり、尖閣諸島は自衛隊の戦闘機などに乗って何度か空中から見ていたが、海面上でみる尖閣諸島は、空から見るのとは違ってまた感動的である。魚釣島の石に描かれた日の丸も見えている。海に飛び込んで目の前50メートルにある魚釣島に上陸したい衝動に駆られていた。

やがて慰霊祭が終わり、各船ごとに自由行動になり私たちの船は、北小島、南小島に向かうことになった。私たちの船がその方向に動き出し300メートルほど進んだ時であろうか。歓声が上がった。振り返ると一部の人たちが感極まったのであろう。海に飛び込んで魚釣島に上陸を始めたのだ。私たちの船もすぐに引き返した。灯台の前まで戻ると数人がすでに魚釣島の土を踏んでいた。それを見て私も上陸したいと思ったが、同じ船に乗っていた山谷えり子議員、長尾敬議員など国会議員の先生方に迷惑がかかってもまずいかなと思い、辛うじて上陸の衝動を抑えることができた。あとで分かったことだが、取手市の小嶋吉浩市議、東京都荒川区の小坂英二区議など5名の地方議員と頑張れ日本の水島幹事長など計10名が上陸したということだった。

上陸については今でも拍手を送りたい気持ちであり、本当によくやってくれたと思う。こう言うと政府の指示に従わないのがいいことなのかという質問が来るに違いないが、日本政府が領土を守ろうとせず、大臣などが自己保身のため問題の先送りだけ考える現状に風穴を開けるには止むを得ない行動であると思う。

この4日前の8月15日には中国人で組織する保釣行動委員会の14名が魚釣島の領海に不法侵入、7名が不法上陸、14名が日本の官憲に逮捕されたが、17日には起訴されずに中国に送還されることになった。どうして日本政府は日本の法律の基づき徹底的に取調べをしないのだろうか。日中関係への悪影響を恐れすぎて、中国人に甘い対応を続けている。強制送還などと言って、極めて厳しい対応をしたかのように日本国民を騙しているのが今の日本政府だ。本国に帰ったあと英雄として迎えられることがどうして強制送還などといえるのか。

大人の対応、冷静な対応などと言って問題解決から逃げているだけだ。この20年間の大人の対応、冷静な対応で状況はどんどん悪化している。それにも拘らずこれからも腰砕けの対応を続けると言うのだろうか。もうそろそろやり方を変えてはどうか。世界中で行われているグローバルスタンダードは国際法に基づく対応である。他国の領海に侵入し、軍の支持に従わない船は銃撃され沈められるのがグローバルスタンダードだ。世界中で日本だけがそれをやらないのだ。だから日本は舐められる。今回の私たち仲間の魚釣島上陸は、日本政府の対応に抗議する意味で、そして中国に対し尖閣を守る日本国民の強い意志を示す上で極めて有意義なことであったと思う。

さて、私たちの魚釣島上陸に抗議して中国各地で反日デモが起きているという報道がなされた。あれは中国政府のヤラセである。中国をよく知る友人の話によると、中国人のほとんどは尖閣諸島など知らないそうだ。中国ではよく反日デモが反政府デモに変わると言われる。私はかつてそれがよく理解できなかった。実は日本のマスコミが反日デモと報道する中国のデモの多くは、始めから中国政府に対する反政府デモなのだそうだ。反政府デモが、反日の垂れ幕などを持たせた一部の官製デモで化粧されているだけで、デモの実態は始めから反政府デモなのだ。だからやらせ過ぎると反政府デモに変わるということなのだそうだ。これを聞いて私はなるほどとひざを打ってしまった。友人の話では日本のマスコミはこれを知っていて報道しないそうだ。日本のマスコミは日本ではなく中国の味方なのだ。

帰りはまた8時間かけて石垣島に戻った。魚釣りをしながらの船旅であった。あまり釣れなかったが、採れたての鰹を船上で刺身で食べさせてもらった。醤油と、なんと酢をかけて食べるのだがこれが素晴らしくいい味だった。

 
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