戦争が経済効果を高めるのは誰よりも日本がよく知っていることだ。朝鮮戦争、ベトナム戦争が日本の戦後復興の追い風になったことは既知の通りだ。

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル第219号(1月5日)を転載

賀正。暴落、大戦争!

慰安婦問題を巡る日韓合意は、米国の斡旋による。日本にしてみれば、慌てて妥協する必要はなかったのだが、米国に泣き付かれたと言った所か。米国が何を焦っているのかと言えば、5月のフィリピンの大統領選だ。
フィリピンは、中国の南シナ海進出に対する急先鋒である。だが親中派の大統領が選ばれれば、容認に転じてしまう。ここで韓国を取り込んでおかなければ対中包囲網は崩壊するだろう。安倍総理も中国対策だと言われれば、妥協するしかなかっただろう。
一方、当の中国は戦争への道を驀進中である。習近平がコントロールしているなどとは、とても思えない。拙著「領土の常識」で、中国は自らを帝国主義の最終段階と位置付け、戦争を歴史の必然と考えている旨を指摘したが、もはや否定のしようもあるまい。

12月26日、機関砲を搭載した中国海警船が尖閣沖で領海侵犯した。実は22日から接続水域を航行しており、その間、中国の情報収集艦が千葉県房総沖で、自衛隊通信を傍受していた。つまり自衛隊が出動しないのを見極めて、武装船が領海侵犯したのだ。次は、中国海警の隊員が尖閣に上陸するだろう。その次は、そこに小屋を建てるだろう。そしてその次は、ヘリポートを造るだろう。
日本は海上警察つまり海上保安庁が対処することになっているが、警察が警察を取り締まることなど出来はしない。警察を排除できるのは軍隊だけであり、軍隊つまり自衛隊が出てこないと分かれば、中国海警に怖いものはない。

新年早々、中国は南シナ海の人工島の飛行場に飛行機を着陸させた。「民間機のテスト」だなどという女性報道官の言葉に誤魔化されてはいけない。要するに軍事基地が完成したのだ。次の焦点は、いつ戦闘機が配備されるか?である。何故なら、それが開戦を意味するからだ。

中国の経済崩壊が中国の軍事拡大を抑制するだろうとの意見があるが、むしろ逆だ。戦争が景気回復に有効である事はマルクス経済学、近代経済学を問わず広く認められている。昨日の中国株の暴落を一番喜んでいるのは中国軍部かも知れない。

 


軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)

鍛冶俊樹(かじとしき)

1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
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