水俣病特措法6万人申請 受け付け延長せず終了
水俣病特別措置法に基づく未認定患者救済で、熊本、鹿児島、新潟の3県は31日、申請受け付けを締め切った。1995年の政治決着以来2度目となる救済策の申請者数は、最終的に6万人に達する見通し。2004年の関西訴訟最高裁判決を機に再燃した未認定患者の救済問題は、大きな節目を迎えた。
申請期限の設定をめぐっては、被害者団体や泉田裕彦・新潟県知事らが「埋もれた被害が取り残される恐れがある」と撤回などを求めたが、環境省は「特措法は議員立法で国会の意思は重い」として期限延長には応じなかった。
救済申請が始まった2010年5月から今年6月末までの申請者累計は、3県で5万7589人。7月分は集計中だが、熊本県は「前月の1159件を上回るのは確実」とし、鹿児島県も同様の状況。最終的に6万人台に上るとみられる。
3県は今後、救済対象者の判定作業を進める。民間診断書など追加資料の提出を10月まで受け付けており、最終的な対象者の確定は来年4月以降にずれ込む見通しだ。
一方、8月以降に新たに健康被害を名乗り出た人が補償・救済を受けるには、公害健康被害補償法(公健法)の患者認定か裁判しか選択肢がなくなる。複数症状の組み合わせが要件の患者認定は門戸が狭く、2000年度以降は19人(うち熊本7人)しか認定されていない。
さらに、訴訟による賠償請求も原因企業チッソの分社化手続きの進行次第では、訴える相手が消滅する可能性もある。「水俣病の最終解決」を目指す特措法は公健法認定業務の早期終了も規定。将来、被害者救済の受け皿が事実上途絶えることになる。
95年の政府解決策では、1万205人(新潟水俣病を除く)が一時金対象。今回は、チッソが12年3月末時点ですでに約2万1500人に一時金を支払っている。(渡辺哲也)
資料
水俣病特別措置法に基づく未認定患者救済
特措法は2009年成立。救済対象は、国の認定基準には満たないものの、メチル水銀に汚染された魚介類を多食し、感覚障害が認められた人。一時金210万円、月額1万2900~1万7700円の療養手当、医療費が無料になる水俣病被害者手帳を給付する。これまでの救済率などは公表されていない。