「切り捨て、許せぬ暴挙」被害者団体怒りの声
「被害者の切り捨てだ。許されない暴挙」「水俣病の幕引きは許せない」-。
水俣病特別措置法に基づく未認定患者救済の申請受け付け最終日の31日、県内の被害者団体からは怒りの声が相次いだ。
水俣病不知火患者会(大石利生会長)の会員ら約30人は熊本市中心部でチラシを配り、申請締め切りに抗議。救済申請中という上天草市姫戸町の男性(84)は「周囲には、差別を恐れて声を上げていない人がまだたくさんいる」と訴えた。
県などによると、特措法の最終的な申請者数は約6万人に上る見通し。31日、水俣市役所では90件を超す駆け込み申請があった。
天草などの救済対象外地域で被害者掘り起こしを続けた同会は、県庁で記者会見。大石会長は「申請者の背後に被害者が大勢埋もれている。締め切りはあまりに一方的。水俣病を終わりにしたいという姿勢の表れだ」と語気を強めた。「期限を切った救済などあり得ない。われわれは闘い続ける」
水俣病被害者互助会事務局の谷洋一さんは「あたう限りの救済といいながら、国は被害実態に向き合わなかった。1995年の政治決着も破綻したのに反省のかけらもない」と国の姿勢を批判した。チッソ水俣病患者連盟の高倉史朗事務局長も「申請数が膨らんだのは、国が実態調査をしてこなかったことの表れ。地域や年齢の非論理的な線引きや救済状況を公表しないことなど、問題を抱えたままだ」と指摘。「被害者は今後も患者認定申請を最大限に活用して闘うべきだ」と語った。
一方、申請期限に理解を示していた水俣病出水の会の尾上利夫会長は「被害者の将来に不安がないよう地域づくりを進めたい」とコメント。水俣病被害者芦北の会の村上喜治会長は「国は今後どんな対策を講じるのか、もっと説明すべきだ。福祉の充実が地域の重要課題。これ以上、紛争が起こる事態は避けてほしい」と、水俣病に翻弄[ほんろう]された地域の将来を案じた。(辻尚宏、楠本佳奈子)