再生誓う鎮魂の祈り 水俣市で水俣病慰霊式
水俣病の公式確認から56年を迎えた1日、水俣病犠牲者慰霊式が水俣市月浦の水俣湾埋め立て地で開かれた。患者・遺族、市民、行政、原因企業チッソの関係者ら約750人が参列し、犠牲者に祈りをささげ、地域再生を誓った。一方、被害者団体からは、水俣病特別措置法に基づく未認定患者救済制度の7月末申請締め切りに反対する意見が相次いだ。
慰霊式は患者団体などでつくる実行委と市の主催。親水護岸の「水俣病慰霊の碑」前であった式では、鐘の音を合図に参列者が黙とうし、献花台に菊の花を手向けた。
患者・遺族を代表して胎児性水俣病患者の永本賢二さん(52)=水俣市=が「祈りの言葉」を朗読。「水俣病は終わっていません。患者さんたちの気持ちをわかってほしい」と訴えた。
慰霊式に初参列した細野豪志環境相は「水俣病拡大を防げなかったことをあらためておわびする。国として責任を持って解決に全力を挙げる」と述べ、医療・福祉の向上や地域振興に取り組む方針をあらためて表明。蒲島郁夫知事も「特措法の申請期限の終了後も、地域の方々の健康不安の解消、軽減に取り組む」と述べた。
細野環境相は慰霊式に先立ち、被害者10団体と意見交換。特措法の周知への協力を求めたが、被害者団体側からは「申請期限を設けるべきではない」との声が相次いだ。
慰霊式後、会見した細野環境相は「残り3カ月、広報して救済するのが政府のやるべきこと」と述べ、申請期限延長に否定的な考えを示した。(辻尚宏)