4月26日東京地裁が小沢一郎氏に対して無罪判決を下した。これをうけて世論は二分しているが、民主党内の小沢グループでは早くも党内復帰の気運が高まっている。
判決の時間に合わせて各テレビ局は特番で報じ、新聞は号外を出した。この判決にそれほどの価値があるのか?今行われているのは検察対小沢の権力闘争だ。犯罪の有無はたいした問題ではない。今回の裁判の焦点である土地取引に関して、率直にいって書類手続き上のことであり部外者には興味のない話だ。それよりも過去の新進党・自由党時代の政党助成金の行方を追うべきだった。これは公金にまつわる国民の関心ごとである。
政権交代後、数百人の国会議員が一同に中国を訪問した。国政にかかわる議員が他の一国に数百人揃っていくなど前代未聞だ。盛大に迎えてほしいがために、宮内庁に圧力をかけ療養中の天皇陛下を来日中の習近平に会わせた。中国の次期主導者として最有力であるとはいえ習近平は序列5番目に過ぎない。しかも共産党というギャング組織内でのことであり、一寸先は闇の世界だ。
そして、国民主権を蔑にする外国人参政権というものを打ち出した。これらは小沢一郎という人間の国家観を晒した行動だ。国家の政治リーダーとして論ずるにも値しない行為といえる。
民主党内の盛り上がりから察すると、検察側は上告するだろう。この裁判の目的である「小沢潰し」の仕切り直しだ。
それを回避するためには、今回の無罪判決をもって不名誉を残さず早期に引退することだ。
様々な論評に触れながら、最も説得力のある屋山太郎氏の正論である。
産経ニュース【正論】2012.4.27 より一部抜粋
評論家・屋山太郎
小沢氏よ「無罪」を引退の花道に
小沢一郎元民主党代表の政治資金規正法違反の裁判で、無罪判決が出た。無罪になったからといって、私の小沢氏に対する評価は全く変わらない。自分に都合の悪いことは黙る、相手がひるむと恫喝(どうかつ)するという小沢氏の流儀は、日本の政治を担う指導者の、あるべき手法とはかけ離れている。
≪不動産買いあさりは師譲りか≫
小沢氏が、投資家ではなくて政治家でありながら、なぜ、不動産を13カ所も買いあさったのか。それは、師匠の田中角栄氏の生き方をまねているからだろう。
角栄氏は、土建や土地売買で莫大(ばくだい)な政治資金を手にし、田中人脈を培養した。傘下の国会議員を最大110人にまで増やしている。「角福戦争」を戦った福田赳夫氏は角栄氏を評し、「1人が50人を縛る。その50人が200人を支配する。これでは政治が独善、独裁に陥る」と言ったものだ。
≪政党助成金で大勢力を形成≫
小沢氏は新進党を解散し、自由党を分裂させ、民主党に転がり込んで母屋を取る。その手口は、党のカネを握って傘下の議員を増やすというものだった。解散した党に残った政党助成金を、小沢氏は私物化し、その総額は一説に28億円といわれているが、小沢氏は一切、明らかにしていない。
選挙の責任者となって、小沢氏は何百億円もの政党助成金を自らの一存で使い、“小沢ガールズ”をはじめ100人余の追随者を当選させた。その選挙で、民主党は政権を取り、その政権党に、小沢氏は公金で「党中党」を築いたのである。
与党の中に、100人もの支持議員を作れば、司法の攻撃への盾にでもなると、角栄氏同様に思っていたふしがある。だが、世間の常識に照らせば、人のふんどしで相撲を取った、ということになる。教養と武士道精神がある指導者が最も恐れる言われ方だろう。
≪野田降ろしに走れば筋違い≫
小沢氏は無罪が確定したら、政治活動に本格復帰し“野田(佳彦首相)降ろし”を始めるだろう。「野田氏は行革や、選挙で公約したことをやっていない」との理由だそうで、呆(あき)れてしまう。
日本外交は、「普天間飛行場の移転先は少なくとも県外」との鳩山首相の一言で崩れ去った。小沢氏は、議員を含めた600人を引き連れて訪中し、屈辱的な朝貢外交を展開した。今、嫌中感情を抱く日本人は9割に達している。米国に距離を置いて中国と交流を深める外交方針などは、国民感情を逆なですること甚だしい。
民主党政権を大きく躓(つまず)かせた張本人は小沢氏であって、自らの政策失敗を反省せず、政治手法の問題点を棚に上げ、後続の野田氏を攻めるのは恥知らずだ。度し難い古い政治を引きずっている小沢氏に、強く政界引退を勧めたい。(ややまたろう)
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