「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24(2012)年3月22日通巻第3595号 を転載

北京を駆け抜けたクーデターの噂、政変の緊張を高める効果?
軍の対日強硬発言が連続したおり、官製の情報操作の可能性なきしもあらず

20日夜、中国のネット、ツィッター空間で軍事クーデターの噂が飛び交った。戦車が目抜き通りを行きかう写真が添付されたため一種緊張が走ったが、どうやら写真は偽造と判明(南京の偽造写真同様にコラージュで写真が加工されていた)。

しかし21日付け人民日報には「尖閣諸島海域で中国が開始している海洋調査船の巡視活動が明確な目的を持っており、それは『日本の実効支配を打破するための定期巡視だ』と中国国家海洋局東シナ海管轄当局者が表明した」と報じられた。

当局者はまたこうも発言している。
「巡視は過去40年余、日本側が釣魚島(尖閣諸島の中国名)とその付属島嶼および周辺海域に対して強化してきた「実効支配」を弱め、「実効支配」と「有効統治」のいわゆる「時効取得」によって中国領土である釣魚島を最終的に盗み取ろうとする日本側の企みを打ち破る助けとなるのだ」と。

この当局者の発言には前段がある。
中国人民解放軍のシンクタンクのひとつ、「軍事科学院世界軍事研究部」の元副部長で、中国軍事科学学会常務理事・副秘書長の羅援少将は三月のテレビ番組で繰り返し、尖閣諸島の中国領有を主張したうえ「尖閣周辺で軍事演習を行う必要がある」と発言した。

これは3月6日に深センの衛星テレビのプログラム(「軍事情勢生中継室」)のなかで羅少将がインタビューに答えたもので、羅は「釣魚島が中国領土であるのなら、主権を行使する。われらの軍用機、軍艦は適切なタイミングで魚釣島附近へ到達できるし、もし日本釣魚島に強行上陸するならば、われわれは軍事的手段を行使できる。このため中国海軍は釣魚島附近で軍事演習を行う必要がある」としていた。

こうして日中友好四十年を祝うイベントが用意されている外交的タイミングに、敢えて軍が北京の権力中枢に挑戦するように強硬姿勢を繰り出してきた背景には、習近平次期政権への軍の強硬ポーズ演出によるデモンストレーションが含まれるのだろう。

 

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