3月2日午後、東京地裁でNHKの偏向報道に対する集団訴訟の第11回公判が開かれた。
この問題の発端は、2009年4月5日放送のNHKスペシャル_シリーズ 「Japanデビュー・第一回 アジアの”一等国”」において日本統治時代の台湾について、事実をねつ造し偏向報道をしたとして、日本と台湾両国の視聴者や番組出演者などがNHKに対して強く抗議し、謝罪と訂正を要求したことからはじまる。
それに対しNHKは、直接取材した事実報道であると主張し、抗議を退けた。これをうけて日台双方の視聴者と取材を受けた人たちを含めた約1万人が、精神的苦痛を受け民族の誇りを傷付けられたとして集団訴訟を起こした。集団訴訟としては前例がないほど大規模なものだが、被告がNHKという国内最大メディアであるためか、大手メディアではほとんど報道されていない。
事件の経緯: NHKスペシャル シリーズ 「JAPANデビュー」(ウィキペディア)
この日の公判では、番組内でパイワン族との通訳を務めた陳清福氏が証人として出廷した。
■証人代理人質問
・通訳を務めることになった経緯は?
撮影の一か月ほど前に台北在住のNHK職員の台湾人が、日本のテレビ局が取材をしに来るにあたって日本語とパイワン語の通訳をしてほしい、と言ってきた。その台北の人は地元の人が連れてきた。
昔の日本の先生はとても厳しくて礼儀正しい教育だった。そこで習った日本語が、日本のテレビ局の取材で役に立てることが嬉しかった。戦後は日本語を使うことがなかったので60年ぶりでした。
後日、日本人3人を含む6人が取材に来た。
・その時の様子は?
パイワン族の通称「ハマコ」さんがいた。
取材班の一人が一枚の写真をハマコさんにみせると、その写真を見ながら日本語で「悲しい」といった。この写真はイギリスに行った時のパイワン族の写真で、民族衣装を着た人たちが写っており、その中にハマコさんの父親がいた。あとで、なぜ悲しいのかきいたところ、懐かしいという意味で言ったことがわかった。日常の中で日本語を覚えた程度のハマコさんは「悲しい」と「懐かしい」を同意語と勘違いしていた。
パイワン族の人たちをイギリスに連れて行き、人間動物園のように見世物にしたと放送しているが、取材の時にはそんな話はなかった。また写真に写っている人たちの服装はパイワン族として正しい服装であり、恥ずべきものではない。
※番組の中では、人間動物園にさらされたパイワン族として紹介され、その写真に写った父の姿を見た娘さんが「悲しい」という1カットが放映された。
そのような表現をされたことにパイワン族は皆怒っている。イギリスでの博覧会には他の多くの民族が同様に紹介されており、決して差別的なものではなかった。むしろ自分たち民族を表現できる場として、うれしかった。
■被告代理人質問
・陳さんの日本時代の名前は?
黒川です
・ハマコさんは日本語はできないのですか?
ハマコさんは子供のころから病弱で学校にはあまり来ておらず、日本語の勉強はあまりしていない。生活環境のなかで覚えた程度だ。台湾語もほとんど話さず、日常はパイワン語だけで生活している。
・あなたは通訳したことに対して謝礼を要求していますか?
していない。
私は子供のころから日本の教育で育ったが、戦後は全く日本語をつかっていなかった。今回通訳を頼まれたときは、自分の日本語が役に立つと思ってうれしかった。
・今は裁判を通じてお金を要求していますね?
していない。
※裁判で謝罪と慰謝料を要求していることを、カネ目当てと置き換えようとしている。
陳さんは、慰謝料が入ったらパイワン族と日本の関係を残すため、クスクス神社を再建したいと公表している。
■裁判官女性から質問
・台北からNHK職員の台湾人が来た時に取材内容を聞きましたか?
聞いていない。日本人とパイワン族の通訳を頼まれただけだ。
・見せ物という言葉の意味を知っていましたか?
知らない。
約2時間で閉廷後、傍聴席にいた集団訴訟の参加者たちに挨拶する陳清福氏と華阿財氏。
次回は5月18日(金)13:30より同法廷103号にて、番組ディレクターの島田雄介氏が出廷し、尋問が行われる。
これだけの証拠と多くの証言によって、NHKの捏造は白昼のもとにさらされている。人権と報道の正面衝突に、今後NHKがどう対抗していくのか、追って注視したい。
裁判後、チャンネル桜で収録された番組映像
資料:第一回 NHK1万人訴訟の裁判を解説
国際問題アナリスト 藤井厳喜
対NHK1万人訴訟、いよいよ始まる!―史上最大の集団訴訟と情報戦