「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平茂23(2011)年11月17日通巻第3485号 を転載
米海兵隊2500が豪州ダーウィンの豪軍基地に駐留へ
中国の東アジア軍事力の突出ぶりに「射程外」でも対応
米豪の秘密交渉はずっと続いていたのだ。
ブッシュ前政権でも、豪への米海兵隊駐留計画はあったが、中国を刺激するといけない、として共和党タカ派さえも躊躇ってきた。まさか、対中強硬路線をリベラル色が濃いオバマ政権で実現するとは予測しにくかった。
まして豪のジュリア・ギラード首相も、どちらかと言えば対中宥和派、その姿勢に変化が見られたのは豪リオ・ティント社を中国が買収しようとした土壇場で豪議会が反対すると、駐中国のリオ・ティント社社員四人をえん罪をでっち上げて裁判にかけるという無謀な報復をしたからだった。
オバマ大統領は訪問先のキャンベラで記者会見し「米豪関係の強化は東アジアの安全保障のためであり、ステップ・アップだ」と発言した。
これを豪の有力メディア『ジ・オーストラリアン』紙主幹のポール・ケリィは「大胆でダイナミックは変革。ギラード首相は同盟関係を作り直した」
と絶賛した。
オバマ大統領はハワイでのAPECを終えるや、アジア九カ国歴訪の旅にでた。豪訪問は二日間で、豪NY米条約(ANZUS)の60周年を祝う目的が表向きのもの。
ただしオバマは2010年に訪豪を計画しながらヘルスケア議会対策とメキシコ湾原油流失事件で、二回キャンセルした経緯があり、こんかいの訪問は豪政財界も大歓迎で迎えた。
礼砲21発、しかしオバマはシドニーもメルボルンも立ち寄らず政治首都キャンベラに到着した。
豪のメディアによれば、米豪関係の強化は82%の国民が賛同するものの、米軍の駐留は55%の賛成、左翼、リベラルの反対論が存在する。
▲中国は顔色変えて豪批判を展開したが。。。。。
最終的にオバマは、インドネシアで開催されるEAS(東アジア・サミット=ASEANプラス8)に出席する。
11月17日(本日)には豪議会で演説し、さらに海兵隊の駐屯が予定される豪軍基地をギラード豪首相と一緒に訪問し、セレモニーを盛り上げる。
こうして米豪両国は対中国への姿勢の変化を強固にしたが、日本ははたして、この外交上の変化を正確に認識しているのだろうか?
実際にオバマの演説には「米国の東アジアへの関与のステップ・アップだ」という鮮明な文言がちりばめられていた。
米海兵隊は当初、250名の規模で豪北部ダーウィンの豪軍事基地に駐留し、米豪共同軍事演習をおこない、徐々に規模を拡大し、将来的には2500名の陣容を整える。米軍基地は建設しない。
このニュース、日本にも衝撃的だが、慌てているのは北京である。どうやら米豪秘密交渉を事前に北京の諜報筋がつかんでいなかった様子であり、オバマ・ギラード会談で、唐突に発表されたことに苛立ちを覚えている。
日本には玄蕃外務大臣に事前の連絡があった。
中国外交部劉為民報道官は「時期的にもふさわしくなく議論の余地がある」と不快感をあらわにしたものの対米、対豪非難は避けた。
しかし『人民日報』は強い批判を展開し、社説では「豪は不適切な選択をしたが、ギラード首相は経済的な中国依存という現実的側面を軽視した。米豪軍事強化は不適切であり、豪は十字砲火にさらされる」となんだか脅迫めいた言葉を並べている。
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