米国、台湾、中国では国家の指導者を決める選挙を来年に控え熾烈な攻防をしているが、ロシアにおいても来年は大統領選挙だ。プーチン帝国化したロシアの国内事情は中国と同様なのか、その情報は少ない。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成23(2011)年9月21日通巻第3429号 を転載

ロシアは暗黒の時代、「ビザンチン帝国の再来」から逸脱したとルシコフ
クレムリンにさからうと裁判沙汰、財産没収。政治生命は絶たれる

クレムリンという総称は、この場合、権力中枢を陣取るエスタブリシュメント。このところクレムリンがロシアの全マスコミを支配し、批判したジャーナリストは消された。議会は与党の翼賛政治、あやつり人形らが討論まがいを展開し、ロシアの経済はほぼクレムリンを陣取る旧KGBマフィアが寡占する。

プーチンに逆らった政敵はほぼ壊滅、ホドルコフスキーは牢獄にとじこめたまま、彼の経営したロシア最大のメジャー「ユコス」はクレムリンがみごとに乗っ取った。

企業乗っ取り、脅迫、反対者の暗殺。危険を感じた政治家はさっと国外逃亡。ロシアの基幹産業である石油、ガス、ならびに軍需産業のあらかたはプーチン与党が支配し、正義、公平というただしき路線から大きく逸脱した。
クレムリンを批判しているのはロシア共産党だけ、という皮肉。

かつてロシア政界で最もパワフルと恐れられ、モスクワ市長をながく務めたルシコフは、一年前に失脚(プーチンが解任)、いまは大学教授で、政治的には鳴かず飛ばずの境遇だが、夫人に起訴の危機が迫る。

プーチンか、あるいはメドベージェフ大統領再任かという政治境遇下、すこしでも政敵の動きを封じ込めようとクレムリンは束になってルシコフの次の政治的動きを遮断しているわけだ。
ルシコフは次の大統領選に打って出る用意があるらしい。

ルシコフ夫人のエレナ・バツリナは西側のどこかの國に事実上亡命している。彼女はルシコフ全盛時代にモスクワの不動産ビジネスで億万長者となった。
この過去を不正取引だと、検察は起訴準備をすすめており、もしルシコフ夫人がモスクワへ帰国すれば拘束されることは間違いなしという。

ルシコフは久しぶりに西側マスコミとの会見に応じ、「いまのロシアの政治は暗黒にもどりつつあり、ビザンチン帝国の再来といわれた過去の政治は、クレムリンの気まぐれで崩壊し、まるで別のかたちの、異様に肥大したビザンチン帝国が形成されかけている」と言った(ヘラルドトリビューン、9月21日)。

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