横浜市の教科書採択で中韓のメディアが大騒ぎをしているらしい。教科書採択は自治体の所掌であり国内問題ですらない。
先月の中国高速鉄道の事故で中国の面子(めんつ)は丸潰れとなった。中国の威信の低下は必然的に日本の威信の相対的上昇となる。従って中国としては日本の威信を傷付けることが、あの事故で失われた威信を回復する早道だと考える。
The Japan Timesは日本を代表する英字紙であり、日本に関心のある世界中の人々が電子版で読んでいる。また日本に駐在している外国人記者も必ずしも日本語が堪能でない事もあって読んでいる。ところがこの記事の見出しは「教科書騒動、中国メディアを怒らせる」”Textbook row fires up China’s media”まるで日本に責任があるかのような書き方だ。

海外のメディアから文句を言われる筋合いはなく、日本のメディアは「内政干渉を許さない」という毅然とした姿勢をとって当然だろう。「中国メディア、日本に八つ当たり」とでも概説するのが正しいのである。

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル【8月9日号】 を転載

共同通信は中国メディアか?

横浜市の教科書採択で中韓のメディアが大騒ぎをしているらしい。教科書採択は自治体の所掌であり国内問題ですらない。海外のメディアから文句を言われる筋合いはなく、日本のメディアは「内政干渉を許さない」という毅然とした姿勢をとって当然だろう。

ところが日本のメディアは必ずしもそうではない。そのいい例が昨日、英字紙The Japan Timesに載った共同通信の記事だ。冒頭で「中国メディアは、日本の公教育制度において右翼的傾向が台頭していると警告している・・・」(拙訳)と概説している。

日本の教科書はすべて文科省によって検定済みであり右翼的偏向などある筈はない。もしあるとすれば現民主党政権が右翼政権だということになる。つまり中国メディアの主張は支離滅裂なのだ。

例えば事件報道でもし「容疑者が無実を主張」という記述が冒頭に来て事件全体を概説している場合、この記事は明らかに容疑者側に立っている。同様に共同通信の記事は明らかに中国メディアの側に立っているのだ。

先月の中国高速鉄道の事故で中国の面子(めんつ)は丸潰れとなった。その影響は経済だけでなく軍事にまで及んでいる。中国海軍はほぼ改修を終えたソ連製空母ワリヤーグの試験航行を7月中にも行う予定でいた。南シナ海領有権問題でベトナムやフィリピンが中国に反旗を翻すのを威圧する目的だった。

ところがあの事故の影響で再度総点検となったらしく航行が延期されている。もし空母が航行に失敗すれば中国は軍事・経済両面で威信が崩壊する。そうなれば周辺国が反旗を翻すのみならず国内で反乱も起こりかねないのだ。

中国の威信の低下は必然的に日本の威信の相対的上昇となる。従って中国としては日本の威信を傷付けることが、あの事故で失われた威信を回復する早道だと考える。折しも8月だ。中国が歴史カードを突き付けてくるだろうなどということは、あの事故の直後から日本の中国通の間で囁かれていたことだ。中国を20年も観察していれば気付く筈で日本のメディアは今回の中国メディアのキャンペーンなどとうに予期していたと言っていい。

だとすれば「中国メディア、日本に八つ当たり」とでも概説するのが正しいのである。ところがこの記事の見出しは「教科書騒動、中国メディアを怒らせる」”Textbook row fires up China’s media”まるで日本に責任があるかのような書き方だ。

The Japan Timesは日本を代表する英字紙であり、日本に関心のある世界中の人々が電子版で読んでいる。また日本に駐在している外国人記者も必ずしも日本語が堪能でない事もあって読んでいる。そんな彼らがこの記事を読めば日本が悪いと思う事は必定であろう。

まさに中国の戦略は日本人の多くが気が付かぬ間に着々と成功しているのである。この中国の巧みな宣伝戦に協力している共同通信とは一体どこの国のメディアなのか?

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