「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成23年(2011)7月25日通巻第3376号 を転載

次は中南海に深刻な権力闘争を惹起する

中国新幹線事故-死者43名、負傷200名以上。胡錦涛政権に衝撃

劉志軍前鉄道部長(鉄道大臣)が、ラッパを吹いて推進した新幹線早期達成、世界一速度が、これほど短時日で裏目にでて、期待が裏切られることになろうとは予測だにできなかっただろう。
劉の失脚は新幹線工事にまつわる汚職。賄賂につきものの現金、豪邸、美女。その分が手抜き工事となり、路盤の手抜き、トンネル工事の鉄筋やセメントのごまかし。一番怖いのは高架橋、河川にかける橋梁の地盤工事の手抜きである。

劉志軍失脚により、大きく変更されたのは、2020年までに16000キロ新幹線拡大プロジェクトの実現はほぼ見込み薄となったこと。予算が半分以下に削られたこと。そして350キロの速度は、300キロに制限され、おなじく300キロ新幹線は250キロとされた。スピードの魅力は一気に色あせる。

じつは劉志軍は江沢民派であり、上海派を追い詰める絶好の機会を胡錦涛たちは得た。
その上に降りかかってきたのが新幹線大事故だから国家の威信を失った表面的政治の舞台裏では、団派が上海派をコーナーへ追い込める最大のチャンス到来ということになる。

23日の事故は死者43,負傷200以上。胡錦涛政権に深刻な問題を投げかけ、直ちに張徳江・副首相を現場に派遣して原因解明と責任者追求に当たらせる。
ところが張徳江も上海派である。上海派に上海派の追い詰め作業をやらせ、うまく行けば、ここで一気に次期皇帝=習近平の政治力を剥ぎ取るという荒技も可能となる。

なお、第一報では「D3115がD301に追突した」とされたが、これは逆で、D301がD3115に追突し、D301の前四両が脱線した。高架の高さは15メートルだった。
前号で書いたD301は北京発上海行き夜行寝台だが、最近、路線が延長され、北京から福州へ距離が伸びていた。温州は上海から南へおよそ1000キロ。

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