日本シルクロード科学倶楽部 2011/05/08 を転載

科学評価がずさんな政府の福島介入は過剰であり不当
福島を守ることは日本を守ること

みなさん、こんにちは、札幌医科大学教授 高田純です。

福島復興は試金石です。私たちはマグニチュード9.0巨大地震津波災害に決して負けません。

3.11震災以来、政府の初動失敗と被災地支援の遅れ、誤った介入が顕在化しています。特に、福島第一原子力発電所周辺20km圏内で発生している政府介入による、被災者の死亡、家畜の大量死亡は、見過ごすことはできません。これら人と家畜の死因は、核放射線ではありません。人間としての心を失った非道な政府の介入で殺されたのです。

原子核反応が停止した福島第一原子力発電所での巨大津波による冷却機能喪失により生じた核災害では、核放射線により誰一人として死亡してはいません。誰一人として、急性放射線障害になっていません。福島はチェルノブイリではないのは明らかです。今月号WILLにある私の論文の通りです。

20km圏内避難者の外部被曝線量は、チェルノブイリ避難者の100分の1、甲状腺線量は1000分の1から1万分の1と低く、誰一人として、核放射線による健康被害は受けることはありません。これが、私の4月上旬に実施した福島20km圏内を含む東日本放射線衛生調査と20年間のチェルノブイリ調査、楼蘭周辺を含むシルクロード核爆発災害などの世界の放射線被曝地調査からの専門家としての結論です。

政府事故対策本部の強制的介入の科学根拠は極めて不透明です。署名入り科学論文が開示されず、国内の専門科学者の指示も得られていません。文部科学省が4月末に発表した長期線量予測は、今後の線量低下や屋内退避すら考慮しない誤った計算です。こうした非科学にもとづいた飯館村などの新たな避難勧告の正当性は全くありません。

放射線防護の介入は、メリットとデメリット、陰陽両面の天秤のバランスで決定されるのです。この原理は国際放射線防護委員会勧告として広く理解されています。今回の福島は低線量事象であり、政府介入は、3月12日の緊急避難を除いて、長期介入は決して正当化されるものではありません。

低線量事象に対する政府介入は過剰であり、20km圏内強制避難者の健康と財産に対して多大なマイナスとなっています。この実害のすべては、政府および事故対策本部が責任を負うものであり、弁償すべきであります。

今、広島・長崎に次いで、三回目の核攻撃を福島が受けたかのような混乱が日本国内に発生していますが、国民の皆さん、落ち着いてください。そんなことはないのです。福島では誰一人として、核と放射線で死んでいません。死因は、地震と津波、それと、政府の不当非道な介入が原因です。受け入れ先の用意されない入院患者さんたちが死んでいるのを思いだしてください。飼い主と引き裂かれた牛や豚などの家畜、犬などのペットが飢えと渇きで死んでいるのです。ソ連ですら、チェルノブイリでは家畜を保護したのです。風評被害の情報源は政府にあります。とんでもないことです。これでは日本経済は沈没してしまいます。

飯館村などに対する科学根拠のない計画避難という名の不当な政府介入は断じて認めるわけにはいきません。これ以上政府による人災を拡大させてはなりません。みんなの力で阻止しましょう!

福島を守ることは日本を守ること。私たちは、4月上旬の東日本放射線衛生調査の実施と緊急報告会、そして正しい情報を伝える活動など、福島への人道科学支援を、白石念舟氏を会長として進めています。みなさん、この運動への参加も含めて、よろしくお願いいたします。
がんばろう!

高田純 札幌医科大学教授
平成23年5月7日

文献

1 高田純 放射能恐るるに足らず。WILL6月号 2011.
2 高田純 世界の放射線被曝地調査。講談社ブルーバックス 2002.
3 高田純 「お母さんのための放射線防護知識」ほか 高田純の放射線防護入門シリーズ 医療科学社
4 高田純 意見、産経新聞5月5日朝刊1面 2011.