花岡信昭メールマガジン918号を転載

<<両陛下が避難所へ>>

腰をかがめ、あるいはひざをつけられて、両陛下は被災した人たち一人ひとりに話しかけられた。

救援作業の邪魔にならないようにと、この日まで待たれ、都内の避難所へのご訪問となった。陛下の国民向けメッセージといい、計画停電に合わせて毎日電気をつかわない時間帯を設けられていることといい、目がうるんでくる。

戦後最大級の大惨事にあって、「天皇の存在」を改めて考える。

「天皇制」という言葉があるが、これは妥当かどうか。「制」がつくと「制度」ということになる。制度なら、これを変えることができてしまう。憲法にも本来は天皇条項はないほうがいい。憲法に書いてあると、改正できることを意味するからだ。日本国と天皇は不即不離の関係にあり、日本という小宇宙の中心に、政治的行動をしない天皇の存在がある。

これが日本人のアイデンティティー、共同体意識の根幹にある。

日本における「天皇の存在」は、統治システムの安定という観点から見ても、世界に誇れるものだ。米大統領制も統治システムからすれば民主主義を具現化したものとして評価していいのだろうが、「日本の天皇」にはかなわない。

早い話、なんともはやの首相を擁していても(いまの人のことだけを言っているわけではないのだが)、この国がもっているのは、首相は政治分野、行政分野のトップにとどまっているためだ。

現地視察に執着している菅首相だが、被災地に出向いたところで、涙ぐむ人はいないだろう。逆に石が飛んでくるかもしれない。

「3・11」は日本という国のありようをも考えさせる機会となっている。

以下は、このことを伝える産経配信記事。

天皇、皇后両陛下は30日、東日本大震災の被災者約290人が避難している東京都足立区の東京武道館を訪問された。両陛下が被災者を直接見舞われたのは初めて。
 
両陛下は「お大事にね」「少し休めましたか?」などと、すべてのグループに声をかけられた=写真(いずれも代表撮影)。福島県浪江町から避難してきた養護学校講師、浮渡(うきと)健次さん(34)は「本当に心配してくださっている気持ちが伝わってきた」と話した。都関係者らからの説明を省略し、予定時間を上回る約50分を被災者のお見舞いに費やされた。
 
両陛下は災害状況に心を痛め、16日にはビデオを通じ、国民に向けてお言葉を述べられた。お住まいの皇居・御所では、「国民と困難を分かち合いたい」として、数時間にわたり、明かりや暖房など電気を一切使わない「自主停電」を15日に開始された。側近によると、以降、毎日続けられている。
 
福島県から避難している被災者が9割以上を占める東京武道館(東京都足立区)。ジャンパー姿の天皇陛下は30日、皇后さまとともに、家族らが暮らす区画を1つずつ回られた。
目線を落とし、ひざまずきながら熱心に話を聞かれた陛下は、「本当にご心配でしょう」「ご家族は大丈夫ですか」などと被災者を案じ、複数の避難所を転々とした話を聞くと、「大変ですね」と同情された。
 
皇后さまは乳幼児を抱える母親に「ミルクやおむつはあるの?」「屋外で遊ぶところはあるんですか?」とご質問。子供の前でお手玉をされる場面もあり、周囲に笑いが広がった。
多くの避難者は、両陛下と話していないときも、正座を崩さず両陛下を目で追った。涙を浮かべる姿もあった。
即位後、陛下は大規模な自然災害が起きるたび、皇后さまとともに可能な限り速やかに現地を訪問されてきた。平成7年の阪神大震災では、震災後約2週間で兵庫県に入られている。
今回の災害からもすでに20日目を迎えたが、現地に入るには警備面の負担などを考えると時期が早いとして、まずは都内の避難所を訪問された。
 
両陛下はほかにも「現段階でできること」を考え、実行されている。お言葉を述べた映像の公表や、御所での「自主停電」。宮内庁の御料牧場(栃木)の生産品の卵、野菜を避難所に届けたり、那須御用邸(同)の職員用の風呂が避難者に開放されたりした前例のない取り組みも、両陛下のご発案だった。
 
両陛下が心を砕かれる一方で、皇室に関する根拠のない話がネットを通じて出回っている。陛下や皇族方が、余震や放射線の影響を避けるため「京都に移動された」などとする内容だ。
震災以降、各種行事の出席を中止し、公の場に出る機会が少なくなったことが背景にあるようだ。陛下のお言葉のビデオが発表された16日以降は「映像は海外で撮影された」という根拠のない話も登場した。
 
真偽を会見で問われた宮内庁幹部はこう答えた。「答えるには及ばない。陛下がどこにいらっしゃるかは、みなさんが一番ご存じのはずです」
両陛下は災害直後から、「一日でも早く被災地を訪れたい」と、一貫して強く願われているという。

<<おそろいの防災服だと・・・>>

民主党がおそろいの防災服をつくって、議員や秘書らが着るようにするのだという。ここまでくると、この政党はどこか肝心なところでネジが抜けているといわざるを得ない。

いま、そんなことが大事なのか。パフォーマンス優先の軽い体質がまたまたこんなばからしい話で明らかになった。個々の議員にはなかなかの人も多いのだが、なぜこういうことになるのか。全国会議員と全秘書が被災地に出向いてがれきの撤去作業をやるために用意したもの、と思いたい。
まじめな話、そのくらいのことをやらないと、おそろいの防災服をつくる意味がないではないか。

東京で仕事している分には、わざとらしい防災服など要らない。かたちだけで震災対策になると思っていたら大間違いだ。あきれはてて、もうものもいえない。

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