西村真悟の時事通信(平成22年12月23日号) を転載

海上保安官の尖閣映像公開と「処分」について

No.580平成22年12月23日(木)

本日は、天皇誕生日。
おめでとうございます。心より、御皇室の彌榮を祈り申し上げます。
また、昭和二十三年の本日未明、巣鴨において、東条英機ら七名が、連合軍によって絞首され殺害された。連合軍は、殺害した七名の遺体を直ちに東京から運び出して焼却し、その遺灰を海に投棄した。無念だ。
ここに、我が国現代史に刻まれた苦痛がある。この苦痛を我が現代史回復の機転とすることによって、七名の霊に報いねばならない。
本日、未明、このことを強く思った。あたかも、夢のなかで語りかけられているようだった。

さて、昨二十二日、海上保安庁が尖閣映像を公開した海上保安官を停職十二ヶ月とし、同人は「後悔していない」と言い切り退職した。
処分を発表した鈴木海保長官は、「あってはならない事態。国民の信頼を大きく損ねた」と述べ、保安官が所属した神戸の第五管区の本部長も、「映像流出はあってはならない行為。深くおわび申しあげます」と口裏を合わせた。
マスコミも、「流出」に関する処分自体は致し方ないという論調である。
中共に指図されて、尖閣映像を秘密していた菅内閣にとっても、映像の公開は、もちろん、「あってはならない事態」である。
官房長官は、「(保安官の書類送検を受けた捜査当局は)速やかに厳正処分してくらたらと思う」と未だぬかしている。

そこで、これら有象無象の頭の中に無いことを申し上げておきたい。
それは、「あってはならない事態」がなかったら「どうなっていたのか」ということである。それこそ、我が国が「中共の戦略の罠」に嵌っていた。いや、正確ではない。
「中共の戦略の罠に自ら身を委ねて嵌っていった菅内閣の背信性を国民が見抜くことができなかった」というべきである。

では、その「中共の戦略の罠」とは何か。これこそ、二十世紀の我が国が嵌った最大の罠だ。
我が国は、一九二七年に南京で蒋介石の北伐軍の襲撃を受けて以来、一九三七年七月の支那事変を経て泥沼の大陸に足をすくわれるまで、一貫して中国共産党に仕組まれた図式のなかに嵌め込まれた。
それは、「日本が悪で、中国は善」というプロパガンダである。これこそ、現在に至る中共の「国家戦略」であり、江沢民の時代に強化された反日教育の徹底と南京の「三〇万人屠殺記念館」によって常に拡大再生産されている。
このプロパガンダ戦略により、中共は、我が国から膨大な援助という金塊を奪うことができた。

そして、現在、中共は、我が国の金塊ではなく、尖閣さらに沖縄という我が国の領土と領海を奪うことができると踏んでいるのだ。
これが、中共の一貫した戦略だ。
そこで、尖閣映像公開以前、中共は如何なる発信をしていたのか。この度の中共の発信先も、戦前と同じである。中共は、我が国に発信するのではなく、アメリカに発信していた。従って、我が国では、ことの重大性が直ちに解らない。

九月二十四日の、中国船長釈放の前後にアメリカのマスコミには次の「真相はこうだ」的な論調が現れ始めていた。
それは、端的に、「尖閣周辺の中国の漁場では、貧しい中国の漁民が漁をして生活をかろうじて支えている。この無力で貧しい中国漁民を日本の武装した強力な巡視船が追いかけ回していじめている」という論調である。
国際社会、特にアメリカ世論のなかで、この中共の嘘が事実として広がる事態が如何に我が国にとって危険か、歴史を知ればくどくどと説明をする必要もなかろう。
この中共の嘘が世界にまかり通ると、尖閣はおろか沖縄も危ない。

さて、ここまで来ればもう指摘するまでもない。
海保の部下を護ろうとする気力さえない腰抜け幹部と売国と配信の巣と化した菅内閣が言う、尖閣映像公開という「おこってはならない事態」が、その願望通り「おこらなければ」、我が国は如何なる事態に陥っていたのか!
それは、中共の反日プロパガンダへの屈服である。まさに、二十世紀前半から中盤にかけて我が国が陥った苦渋を、再び経験することになったのだ。

しかしながら!海上保安官、一色正春氏の「後悔していない」と言い切る映像公開があった。そして、見よ!中共とその共犯と化した菅内閣の「反日プロパガンダ」は朝日の前のぼた雪のように消え去ったではないか。尖閣の海の、我が国の正義が世界に明らかになったではないか。

以上、尖閣映像公開は、中国の凶暴なる実相と中国船長逮捕の経緯を明らかにしただけではなく、密使とか言う馬鹿な兄ちゃんを北京に赴かせて中共の指図に迎合して共犯となり日本国民を裏切っている菅内閣の総理と官房長官の卑しい根性をも明らかにした。これこそ、「救国の公開」だったのである!
尖閣周辺における私の「体験的海保論」は、後日述べたいと思う。
 
転載元
西村真悟の時事通信