「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24(2012)年8月21日 通巻第3729号 を転載

中国の反日デモを日本のマスコミはいかに伝えたか
朝日はあいかわらず中国の主張を前面に。日経は経済界の懸念を大きく。

8月18日、19日の中国で行われた「反日デモ」は一部が暴徒化したが、はたしてわがマスコミは、いかように事態を把握し、どう解析したのか。暇のある若者の憂さ晴らし、と本質をつく分析も多かった。
まず反日デモが行われたという都市の数でおおきな齟齬がある。

25都市(読売)、24都市(NHK),23都市(朝日)20都市以上(産経、日経、毎日)とどの新聞もテレビも正確な把握が出来ていない。中国国家安全部の公式発表数字がないからである。

論調だが、まともなのは読売と産経くらいである。
産経は「権力闘争の影があり上海派と太子党が胡錦涛に圧力をかける構図」と捉えた。各地で取材中に日本人記者が暴行されたことも伝えた。
また尖閣に上陸した保守系団体や地方議員の言い分をちゃんと掲載している。

日経は「経済関係の悪化を懸念」としてデモに参加した中国人の若者は「経済格差への不満のマグマ」だが、「放置すれば体制批判になりかねず、ガス抜きできれば良いが、コントロールは難しくなる」とする公安関係者の懸念も同列に伝えている。

読売は湖南省長沙でも日系デパートが襲われた事実をカバーしつつ、「反日の影に社会不満」が充満しており、とくに若者の就職難をあげている。
「反日に名を借りたデモが反政府に転化する事態を」当局がもっとも警戒していると分析も正確であり、成都のデモ隊が「毛沢東万歳のあと、『共産党万歳』というと一転して失笑」となったとリアルな現場の目撃談を書く。

毎日は『デモを容認することで高まる反日感情をガス抜き』できたと断定的、成都のデモも「整然と二時間で収束」したが、それも「参加者に憂さ晴らしする気分を共有」と指摘した。

朝日は、救いようがないほど中国寄りで、尖閣に上陸した日本人の振るまいが「軽はずみ」で、これがデモの原因であり、石垣など『地元は困惑』しており、「国益を損なった感情的行為」であると批判する高原明生・東大教授の談話を大きく載せている。この新聞だけは日本の立場を忘れた、やっぱり中国の新聞である。

 
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