カナダで水銀被害を受けている先住民達が水俣市を訪れ、水俣病患者と交流し、経緯や現状を視察している。
カナダでは水銀被害の症状を訴えても行政機関が認めないという。これは過去の日本も同様だ。「被害者が声を上げなければいけない」という認定患者の坂本フジエさん(86)の言葉に、「逆境の中で力強く生きてきたフジエさんに勇気づけられた」と語るカナダ先住民居留地代表のサイモン・フォビスターさん。被害者だけではなくそれを支援する社会環境がなければ実現しない。国の制度や環境が違えば同様にはいかないが、何らかの教訓として生かすことはできるだろう。

水俣病認定者に対する賠償問題は、チッソの分社化を経て法律的に和解はしたが、あくまでも「認定者」に限ってのことだ。また、被害者はその和解内容に必ずしも納得しているのではなく妥協している点が多い。和解契約通りの賠償がなされるか、油断できない状態だ。「未認定者」に関しては現在も深刻な問題として救済申請が続いている。被害者救済に加え、胎児性患者の福祉の充実など、水俣市と政府が協議を重ねて行かなければならない問題は山積みである。

くまにちコム2011年09月12日

「被害者が声を」 水俣病患者、カナダ先住民に

熊本学園大の招きで来熊中の、カナダ・オンタリオ州で水銀汚染被害を受けている先住民らが12日、水俣市などの水俣病患者宅を訪れ交流した。

来熊しているのは、先住民居留地代表のサイモン・フォビスターさん(55)ら5人。同大水俣学研究センターの案内で水俣市や津奈木町の患者宅を訪問した。

水俣市では、胎児性患者坂本しのぶさん(55)の母で認定患者の坂本フジエさん(86)と約1時間懇談。フジエさんは長女を水俣病で4歳で亡くしたことや、しのぶさんを懸命に育ててきた経験を伝え、「患者家族にしか分からないつらさがある。水俣病に終わりはない」と話した。

フォビスターさんが「カナダでも水銀の影響で苦しむ子を抱えた親がいる。症状を訴えても行政機関はなかなか認めようとしない」と訴えると、フジエさんは「被害者が声を上げなければ。互いに手をつないで頑張りましょう」と励ました。

先住民居留地に住み、3人の子どもがいるシルビア・ヘンリーさん(35)は「逆境の中で力強く生きてきたフジエさんに勇気づけられた」と話していた。一行は14日まで水俣市に滞在、市内視察などをする。(辻尚宏)

くまにちコム 2011年09月12日

水俣市長が支援を要請 細野環境相と面会

水俣市の宮本勝彬市長は12日、環境省で細野豪志環境相、横光克彦副大臣と面会し、未認定患者の救済申請が続く水俣病問題の解決に向けた国の支援を要請した。

宮本市長は発生から半年が経過した東日本大震災に触れ、「同じ悲しい歴史を持つ水俣が地域再生のモデルとなれるよう頑張る。引き続き支援をお願いしたい」とあいさつ。被害者救済に加え、胎児性患者の福祉の充実と地域振興を要望した。

細野環境相は「原発問題など環境省の仕事の範囲は広がったが、原点はやはり水俣病問題。被害者の皆さんにできる限りの責任ある対応をしていく」と答えた。

宮本市長は細野環境相らに早期の水俣訪問も提案。前向きな回答を得たという。(渡辺哲也)

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