沖縄県石垣市と与那国町、竹富町からなる「教科用図書八重山採択地区協議会」が選定した育鵬社の公民教科書が一転不採択とされた。
教科書の統一は重要だが、このたびの沖縄県教育委員会の行いは、八重山地区の採択権を侵害するという別の問題を紛糾させることとなった。沖縄に限らず、国内の教育の背景にはこうした政治的暗闘が絶えない。その影響を被るのは、将来を担う子供たちである。

産経ニュース 2011.09.11 を転載

【教科書採択】6時間の攻防県教委、逆転採決を“誘導”

沖縄県石垣市と与那国町、竹富町からなる「教科用図書八重山採択地区協議会」が選定した育鵬社の公民教科書が一転不採択とされた問題は10日、石垣市側が行政訴訟も辞さない構えを見せるなど文部科学省の対応が焦点となってきた。約6時間もかけて不採択に持ち込まれた経緯を検証すると、「指導・助言」という名の下、県教委の不採択を誘導するかのような強引な手法が浮かび上がった。

「ここで統一してもらいたい」。8日に開かれた3市町の教育委員全員による協議の冒頭、県教委の狩俣智義務教育課長はこう述べ、協議を新たな採択の場とすることを求めた。

「新たに採択協議の場とする法的根拠は何か」。与那国町の崎原用能教育長が、協議の必要性に疑問を呈すと、石垣市の玉津博克教育長も「法に従い協議会で結論を出し、答申に沿って石垣と与那国は採択した」と同調した。

一方で答申に従わなかった竹富町の慶(け)田(だ)盛(もり)安三教育長は「採択権は教委にある。協議会の答申に法的拘束力はあるのか」と反論。

文部科学省の見解は「答申に従うのが基本」だが、狩俣課長は「諮問機関である協議会の答申に拘束力はない」と竹富町の主張を“後押し”。「3市町で結論が異なった場合は協議を行う。この場を協議の場としてもらうのが県教委の指導・助言だ」と迫った。

なおも玉津氏が「3市町の教委は別個の組織。何を根拠に3つの教委を合体した協議をやるのか」と主張したが、狩俣課長は「3つの教委の全委員がそろっており、最も民主的だ。ここで協議をしてもらうことが県教委の希望だ」と、押し切ろうとした。

狩俣課長は「協議の形態を各教委で多数決で決めてもらう。例えば教育委員長に一任するとか…」と協議の具体的形態にまで踏み込んだ。教育委員長は各自治体とも育鵬社に反対している。

各教委は分かれて議論したが、石垣市は「採択結果は曲げない」、与那国町は「採決ではなく合議が前提」と、合意しなかった。

しかし、協議の場では採決による採択が提案されたため、玉津、崎原両氏が強く反発して退席。最終的に狩俣課長は「挙手は避けたいが、それしかない」と採決を容認する姿勢を見せ、議長が強引に押し切った。

玉津氏は「県教委の明らかな不当介入の下、合意のない協議により採択権を奪われた」と話している。